訪問先を失礼する際の「おいとまします」の和の作法
目次
そろそろ失礼した方がいいかな…。ちょっと長居しすぎたかな…。
訪問先で相手様と話をしていると、なかなか帰るタイミングが難しいものです。
その場の空気を感じながら、ちょうどいいところで「では、そろそろ…」と切り出せばいいのですが、話が続いていると言い出しにくいものです。
そんな時は、どのように切り出せば、相手に失礼がなく対応することができるのでしょうか?
今回は「おいとま」の作法を調べてみました。
訪問先で長居してしまったら、食事時になる少し前に切り上げること
あらかじめ、「お食事を……」と招かれた場合以外は、食事時間が近づいてきたら、ほどよいタイミングで帰るようにしましょう。
思いがけず話がはずんでしまうと、時間を忘れてしまいがち。
1時間ぐらいのつもりが、3時間ぐらいになってしまうと食事時が近くなってしまうもの。
相手から食事をすすめられた場合は、社交辞令なのか、本心なのかを見きわめることが大事です。
お年寄りや一人暮らしなどで、ふだん寂しい暮らしの方なら、本当に一緒に食事をしてほしいのかもしれません。
こんなときは時間が許すかぎり、食事をご一緒することが相手への思いやりです。
食事をご馳走になると決めた後で好みを聞かれたら、お茶のときと同じで、好きなものをはっきり告げるか、「○○はちょっと苦手ですが、それ以外ならなんでも大丈夫です」などと答えましょう。
食事をする気持ちはなかったけれど、「もう、出前を頼んでしまいましたので」といわれたような場合は、時間が許せば、いただいて帰るほうが礼儀にかなっています。
その時間がないなら、正直に、「ごめんなさい。次の約束がありまして」とはっきり伝えても、失礼にはあたりません。
訪問先で出された料理を、食べてすぐおいとましても大丈夫?
食事後、時間がある場合は少なくとも、20〜30分は会話を楽しみましょう。
胃の消化を助けるためにも、それは合理的ですぐに動かない方がいい。
でもどうしても時間がない場合は、すぐに帰ってもかまいません。
こんなとき、昔は「いただき立ちで……」などといったものです。
最近では「次の約束があるので、あわただしいようですが、これで失礼させていただきます」と挨拶すればいいでしょう。
女性の場合、口紅が落ちているのは下着が見えているのと同じ?
食事の後、女性の場合は口紅が落ちたままで話すのは失礼になります。
とくに欧米では、口紅が落ちているのは下着が見えているのと同じように恥ずかしいものと受けとられます。
だから食事の後、「ちょっと手を洗わせてください」とか、あるいはもっと直接的に、「メイクを直させてください」といってトイレに立ち、手早くメイクを直したほうがいい。
帰るタイミングは「もう少しお話したかった」くらいがちょうどいい
どんなに話がはずんでいても、一般的な訪問は長くて二時間前後で辞去するほうがいいでしょう。
訪問の約束をするとき、「一時間ほど、おじゃまさせてください」などと、あらかじめ告げておけば、「そろそろ時間ですので……」と引き上げどきのタイミングもつかみやすいものです。
そうでない場合は、話の切り替わりどき、お茶を入れ替えようとするなどのタイミングを逃さず、「あら、もうこんな時間。すっかり長居してしまいまして」のようにいい出します。
もちろん、相手は引き止めるでしょうが、椅子から立つとか、座布団をはずすなど行動を伴わせ、姿勢を正して、「今日はありがとうございました」という挨拶に移ります。
引き止めの言葉を真に受けて、さらに長居するようなことは避けます。
惜しまれながら、そして自分ももう少しお話したかった、と余韻が残るくらいがスマートに訪問を終えるコツなのです。
脱いだスリッパは隅に揃えておく
玄関先で長々、挨拶を繰り返す必要はありません。
マンションなどなら、近所に声が聞こえやすく、かえって迷惑になることもあるからです。
靴を履いてから向き返り、スリッパの向きを直し、あがり口の隅に揃えて置きます。
さらにスリッパラックに戻すのはやり過ぎです。
すすめられたら、玄関内でコートを着てもいい
コートを着るようにすすめられたら、玄関内で着るほうが自然です。
相手が着やすいように一肩に着せかけてくれたら、「恐れいります」「ありがとうございます」といいながら、好意に甘えてかまいません。
訪問先を出たら途中で一度、振り返る
門を出たり、マンションならエレベーターホールに向かう途中、一度、振り返る習慣をつけておくといいでしょう。
訪問先の方が見送ってくれる場合があるからです。
振り返って一礼すれば、その気持ちに応えることができます。
そして、手ぶりなどで、もうお入りください、と伝えるようにします。
離れた場所から「もうけっこうですから」などと大きな声を出すのは控えましよう。
帰宅後にお礼状を出すとより丁寧
目上の人を訪問した場合などは、早めにお礼状を出すか、翌日、お礼の電話をかけるようにします。
きれいなカードを用意しておき、お礼状にするのも素敵です。
最近はなんでもメールという時代。
相手の方がメールをよく使うなら、メールでも許されるでしょうが、携帯メールでお礼をすませるのは、親しい関係以外はまだ通用しないと考えておいたほうが無難でしょう。
ただし、帰りの時間や交通事情などを相手の方が心配しているようなら、帰宅してすぐに、「ただいま家に着きました。本日はありがとうございました」と電話やメールで連絡を入れるのも心づかいです。
以上、訪問先を失礼する際の「おいとまします」の和の作法でした。