招待客は結婚式や披露宴の帰りぎわに、引出物を渡されます。家族への手みやげとしての引出物は、今日の結婚式に欠かせないものです。
昔の農村の披露宴では、家族どうし付き合いのある相手の家族全員を宴会に招きました。
酒が飲めない子供も、祝いごとがあると普段会えない遠くの親戚の子供と遊べるといって喜んだものです。
ところが現在の結婚式では、よほど親しい相手でなければ夫婦をともに招待することはありません。
一つの家の代表として、一人の客を招くだけで済ませてしまいます。
それゆえに、喜びごとを家族にも広めてもらうための引出物が結婚式に欠かせないものになりました。
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引き出物の起源は馬を贈った平安貴族によるもの
いまでは「引出物」といえば、結婚式を思いうかべる人も多いが、引出物は本来は、祝宴のときの贈り物をさす言葉です。
「引出物」という言いまわしは、平安時代の貴族が祝いごとで招いた客に馬を贈ったことからうまれました。
当時の貴族は、馬を庭に引き出して客たちに見せて贈り物にしていました。
かれらは、なにか喜びごとがあるたびにまめに祝宴をひらいたようで、それだけ宴席が最大の楽しみでした。
鎌倉時代以後の武士は、刀剣、弓矢やアワビ、昆布などの高価な海産物を祝いごとの贈り物にしました。
しかし「引出物」という言葉は、馬が贈り物に用いられなくなった武家社会でも使われました。
そして江戸時代には、焼いた鯛や鰹節を引出物にするのが流行りました。
いずれの時代でも、当時の人びとが好んだ、ある程度高価で縁起のよいものが贈り物に用いられたのです。
このような引出物は、祝いごとのおりに日ごろ世話になった人びとにお礼をしようとする気持ちからつくられました。