「羊羹」といえば和菓子の羊羹が思い浮かびます。
でも現在のような練り羊羹の形になったのは、安土桃山時代になってから。
羊羹のもともとは、中国で作られた「羹(あつもの)」で、ことわざにあるように熱い吸い物の意味になります。
だから羊羹とは、文字どおり羊の肉の入った熱いお吸い物だったのです。
このお吸い物の羊羹は、奈良朝時代に日本へ、禅文化と共に渡来しました。
しかし、当時の日本では肉食を忌むという習慣があったことから、羊のかわりに小豆を材料として羊の肝の形に作って蒸し、汁に入れて「羊羹」と称していました。
この羹が鎌倉、室町時代に、茶道に使われるようになると、さらに形がかわり、汁の水分を無くして、実だけを蒸した羹が、点心として珍重されはじめました。
やがて、甘味を加えて形が整えられるようになり、それが現在の蒸羊羹になったのです。
当初の蒸羊羹は、小豆あんに小麦粉をまぜ、砂糖の煮汁で練り、せいろで蒸して作りました。
安土桃山時代になると、砂糖を加えたあんに寒天を混ぜて煮つめた、錬り羊羹が工夫されました。
幕末のころになるとさらにその種類も増え、小倉・柚子・芋・栗羊雲などが次々に工夫され、駿河屋などの名店の羊羹が評判をとるようになったのです。