食後に横になるのは消化に悪いこと?
今はダイニングテーブルの上に料理を並べて、イスに座って食事をするスタイルが普通だと思いますが、畳の生活があたりまえだった時代では、座って食事をするのが普通でした。
座って料理を食べて終わると、なんだかすぐにゴロンと横になって、テレビを見たくなります。
しかし食事の後、満腹感に満足しつつ横になろうとすると、きまって両親や祖父母から小言を言われます。
「食べてすぐ寝ると牛になりますよ」、あるいは「食べてすぐ横になると、ツノが生えてきますよ」といった類の皮肉まじりの小言です。
もちろん食べてすぐ横になっていても、人間か牛に変身してしまうわけでもなく、ツノが生えてくるわけでもありません。それどころか、食後に体を休めるのは健康面から見ると、悪いことではないそうです。
食べた直後に眠くなってしまうのは、消化を促すために体を巡っている血がそちらに回って、頭に十分血液が回らないからです。食後に無理に身体を動かそうとすると、消化不良を起こしてしまい体調に響いてしまう。
また「親が死んでも食休み」ということわざもあるので、本来は食後ゆっくりするほうが良いのです。
ただし、横になっても本当に眠ってしまうと、胃腸の消化機能が弱まってしまうのでやってはいけません。
そして食後は横向きで、身体の左側を上に向けた態勢で寝るのがいいと考えられています。右向きに寝ることで、胃から十二指腸への消化物の移動がスムーズになるそうです。
日本人の生真面目な気質が生んだ迷信
ゴロンと横になっている姿は、見た目にも良くはありません。作法を重んじる日本人には、とてもはしたなく映ります。
この迷信が生まれた背景には、食事の作法を重んじていた日本人の感性に加えて、農耕民族らしい勤勉さもありました。
昔から日本人はとても働き者です。だから楽しい食事の時間が終了したのだから、さっさと体を動かして働きなさいという、生真面目な考えがあったのです。
食べても動かないで身体を横たえている様子は、昔から食事の作法にうるさい日本人の感性には合わなかったのです。
食後の度にゴロリと横になって動かない姿から、好きなだけ食べても、その後は動こうとはしない牛に例えて、迷信となって言い伝えられていったようです。