時代劇で切腹をした武士の遺髪を、妻や家族に届けられたとき、その死を知るというシーンをよく見ます。
昔から日本人は男女を問わず、髪の毛や爪を大切に扱ってきました。
髪の毛や爪を燃やして処理することは、縁起の悪い行いとされ、燃やすと不幸が訪れたり、貧乏になったりするとも考えられていたようです。
なぜ、爪や髪の毛を燃やすことが縁起の悪いことと考えられるようになったのでしょうか?
髪の毛や爪を燃やすことは、自分を燃やすこと
髪の毛や爪には、その人の魂が宿ると信じられていました。
人毛を使った日本人形の髪の毛がなぜか伸び続けるとか、人の心を操るために自分の爪を埋め込んだ人形を好きな相手に渡すと恋が成就するとか、そんな話を見聞きしたことはありませんか?
自分の魂が宿った髪の毛や爪を燃やす行為は、すなわち自分自身を燃やそうとする恐ろしい行為につながります。
だから昔の日本人は、髪や爪を燃やす行為から、自分が火に包まれるような恐怖を感じたのではないでしょうか。
反対に、憎い相手を呪おうと決意した人は、相手の髪の毛を何とか手に入れようとしました。
なぜならその人の魂が宿った髪の毛を人形などにつけ、五寸釘で打ちつけると、相手が苦しみ悶えて死ぬと信じられていたからです。
この迷信が信じられたもう一つの理由に、「独特の臭い」が挙げられます。
ライターの火やドライヤーなどで髪の毛や爪を焦がしてしまった経験を持つ人はわかると思いますが、何とも言えない焦げ臭い悪臭がしたはずです。
この焦げた臭いが、遺体を燃やす火葬場で漂う臭いを連想させ、そのため、縁起が悪いと考えられるようになったというのです。
日常生活の中で、好んで爪や髪の毛を燃やす人はいないと思いますが、現代でも納得できる迷信のひとつといえるでしょう。
相手の幸せを願う気持ちを込めて
髪に魂が宿るという意味では、こんな例もあります。
小児がんや先天性の脱毛症、不慮の事故などで頭髪を失った子どものために、寄付された髪の毛でウィッグを作り無償で提供するヘアドネーションという活動があります。
寄付をされる方は、自分の髪を数年かけて長く伸ばして、自分の髪が子供たちの役に立つならばという思いを込めています。
幸せな願いが込められた髪でつくられたウィッグは、きっと子供たちを明るい未来へと誘うでしょう。