取引先など仕事相手と会う際に、手みやげを用意したことがある人は多いと思います。
手土産が会話のきっかけになり、仕事にもこれからのお付き合いにも良い効果があるかもしれません。
ただ、生身の交流が希薄になりがちな現代において、相手との関係や状況により、何を選びどう渡せばいいかは悩むことが多くなりました。
スマートな手みやげの贈り方を知りたいと思い、百貨店の販売担当者やビジネスマナーの専門家に聞いてみました。
基本は「手みやげ選びの大前提は、相手の手を極力わずらわせないこと」。
言い換えればいつまでも残るものより、菓子などの消え物が手土産の基本ということです。
手みやげは話題性のある品を選ぶ
ただし、初対面など相手や職場のことをよく知らないときは、注意すべきことがあります。
賞味期限が近い商品は相手を「急いで食べなければ」という気持ちにさせてしまうし、職場の人数によっては足りなかったり余ったりする可能性があります。
例えばナイフや取り皿が必要なものは、職場の人に負担をかけるかもしれないからです。
そう考えるとやっぱり手みやげの定番は、日持ちする和洋菓子がいい。
金額も相手があまり負担に感じないであろう、3000円前後を目安にすればよいでしょう。
迷った時は、好き嫌いが少ないオーソドックスな焼き菓子で個包装されたものを勧めるといい。
もちろん、日持ちする和洋菓子ならなんでもいい、ということでもありません。
◎さらに贈る品によって、相手の印象は大きく変わります!
相手が何回も食べたことがありそうな有名な菓子では「適当に選んだ」と思われるかもしれない。
「あなたのことを思って買ってきた」という雰囲気を品物で出すことが肝心です。
たとえば、札幌の取引先に東京から挨拶に行く場合はどうでしょう。
当然、札幌で買えるものは、どんなによい商品でも避けたほうが無難です。
東京でしか買えないもので、自分が自信を持って薦められる品がベスト。
そして手渡しするときには「私が大好きなお菓子です。〇〇さんにもぜひ一度食べていただきたいと思いまして」などと、自分が食べた感想を添えると、会話のきっかけにもなるはずです。
◎相手と何度も会うようになったら、手みやげのバリエーションを広げることも大切!
相手やその職場について見聞きした情報で、変化をつけましょう。
相手の職場に小さな冷蔵庫があれば、季節感のあるゼリーの詰め合わせなども選択肢に入ってきます。
話題性のある品を選ぶのも、喜ばれそうです。
ただし、要冷蔵品や果物を使った洋菓子は、午前中の面会にふさわしいので気をつけて欲しい。
午後に会う場合は、買ってすぐに渡したとしても、相手が時間をかけ持ち歩いてきたと思う可能性はあります。
その場合は、品物が傷んでいると感じられたら意味がありません。だから要冷蔵品や果物は避けた方がよいでしょう。
◎手みやげが決まったら、スマートな渡し方を考えましょう。
悩みがちなのが、いつ渡すか。
渡す相手に祝い事などがあった場合は、最初に渡してしまうのがいい。
相手が目上だったり、役職が高い人だったりしたときも、最初に渡すと相手の心を開くきっかけになるでしょう。
最後に「皆さんでどうぞ」と切り出すのも悪くはないですが、肝心なのは面談を実際の仕事につなげること。ためらう必要はありません。
手みやげを渡す際には配慮も必要
渡す際に注意したいのは手みやげを包む袋。
雨や移動中のトラブルでよれた袋では失礼。
きれいな袋で渡せるよう、予備を数枚用意するのは定石です。
さらに定石にさらにひと手間を。
店の袋のほかに、コンビニで300円ほどの無地の紙袋を買い、相手の必要に応じて差し出すといい。
ただし面会場所や立場によって、ブランドのロゴが入った袋を相手が負担に感じることがあります。
そのまま次の仕事場所に向かう可能性も考えて、配慮することが大切。
◎手みやげを渡す時は、袋から出して渡すのが基本
相手が時間を気にしていたり、喫茶店などで人目につく場所で面会したりする場合は、袋のままさっと渡してしまうのも一手。
その時は袋から半分くらい取り出して、和洋菓子などの食品か否かを簡単に説明するのにとどめるのもいいと考えます。
もう一つ心がけるといいのが、簡単なメッセージカードを添えること。
メッセージは、感謝の思いや、皆様でどうぞなど簡単な言葉でよいでしょう。
気持ちを伝えることが大事です。
逆に手みやげを受け取ったときは、1週間以内に必ず手紙や電子メールで感想とお礼の気持ちを伝えるといい。
近年はコンプライアンス(法令順守)を重視する流れで、手みやげを受け取るのをためらう人もいます。
受け取れない職場の人には当然渡せない。
可能であれば、事前に上司や同僚から仕事相手の事情を聞いておくといいでしょう。
受け取りをためらう相手には、会社ではなく僕の個人的な気持ちです。
ご家族でどうぞなどと話してみるといいでしょう。
気持ちが和らげば、受け取ってくれるかもしれない。
このように、手みやげの贈り方一つで、仕事の結びつきが強まることも弱まることもあります。
商品選びやマナーに気をつけるだけでなく、相手がすっと受け取れるように手を尽くしましょう。
その心ばえが最高の手みやげになるはずですから。
※2014/05/19 日本経済新聞より