私の住む家の和室は6畳の畳部屋です。
新しい畳は少し青くて、わらの匂いを強く感じますが、年月とともに日にあたって金色に近い藁色に変色していきます。最近ではフローリングの部屋で椅子に座る生活が定着していますが、ちょっと落ち着きたいときや、お昼寝をしたいときは畳のほんのりした香りと感触が一番心地良いと思います。
現代のように畳を部屋一面に敷くようになったのは、室町時代からだといわれています。
畳のはじまり
最初は今のような厚みのある畳ではなくて、稲藁やイグサを編んだ敷物で薄縁(うすべり)というものでした。
古代まで遡ると、ござ、むしろなども「畳」の仲間です。
万葉集には「木綿畳」が使われた歌があります。
「木綿畳(ゆふたたみ)手向けの山を今日越えていづれの野辺に廬りせむ我れ」
※訳)木綿畳を携えて手向けの山(逢坂山)を越えて行ったらいずれの野辺で寝泊まりすることになるのかしら。
では今のように厚みのある畳が使われるようになったのは、
いつ頃なのでしょうか? 一度頭の中に奈良時代まで遡って、想像してみましょう。
当時は畳といっても庶民が使うことはなく、最初は財力のある貴族や寺院などで普及していきました。
奈良時代は、貴族や寺院の床には石や板が用いられていましたが、さすがにそれでは体が冷えてしまうため、厚畳が考案されました。
しかし、当時は板敷きの一部分に敷くだけでした。
部屋全体に畳を敷くようになったのは、室町時代に書院造りの建築物が作られるようになってからです。
書院造とは、禅宗の僧侶の書斎兼居間が発展したもので、襖、障子、床の間も、このときに考案されたものです。
江戸時代になるとイグサで作られた厚畳が庶民の民家でも使われるようになり、全国的に普及していきました。
「女房と畳は、新しいに限る」と、しゃれていうようにもなりました。
そして畳は、日本の風土や気候に適した床材であり、夏は涼しく、冬は暖かく保温効果があるため、日本の家屋に適した敷物です。
さらに畳は、敷いた面積に合わせて自由にカットすることができ、移動や取り外しも容易であるため、日本の和室に適した床材として現在でも広く利用されるようになりました。
畳の語源
◎畳の語源は「畠(はたけ)」からきたという説
畠は、草木を刈り取って、土地を平らに整えたものを指します。畠を敷き詰めた場所で寝泊まりすると、地面からの湿気や冷気を遮ることができます。そのため、畠が床材として使用されるようになり、やがて「畳」という呼び名が定着したとされています。
◎畳の語源は「畳む(たたむ)」からきたという説
畳むは、布や紙などを折りたたむことを指します。畳は、藁やイグサなどを折りたたんで敷き詰めたものであるため、畳むという言葉が畳の呼び名になったとされています。
減少傾向にある畳の需要と多様化
現代の畳は、従来のイグサや藁を使用した畳に加え、環境に配慮した素材を使用した畳や、畳の上にカーペットを敷いた「カーペット畳」など、様々な種類があります。
また、畳のサイズも、従来の一畳(1.65平方メートル)から、畳を組み合わせて好みの大きさに調整する「カスタム畳」もあります。
一方で、近年は畳の需要が減少している傾向にあります。
これは、住宅の床材としてはフローリングやカーペットが広く普及しており、また、畳の製造技術の伝承や畳職人の人材不足、畳用のイグサや藁の生産減少などの問題があるためです。
少し前までは畳屋さんをよく見かけたものですが、いつの間にか見つけにくくなりました。
しかし、最近では、畳の環境に配慮した性質が注目されています。
畳は、自然素材であるため、生分解性が高く、廃棄時にも環境に優しいという特徴があります。
また、畳には断熱効果や調湿効果があり、住宅の省エネルギー化にも貢献するとされています。そのため、畳が環境に配慮した住宅建材として再評価されることが期待されています。
今後の畳の需要については、従来の畳の需要は減少傾向にあるものの、環境に配慮した畳や新しいスタイルの畳など、新たな需要が生まれる可能性があります。
畳職人の技術伝承や素材の生産など、畳の製造に関する課題を解決し、畳の新たな需要を開拓することが重要とされています。