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菖蒲湯は、もともとは女性しか入れなかった
菖蒲はアヤメ科の多年草で、初夏には紫や白の美しい花を咲かせます。
菖蒲湯は、菖蒲を湯の中に入れて入浴する風習です。かつては、日本全国の数多くの家庭が、端午の節句ともなると菖蒲湯を用意して入浴したものです。
5月5日の端午の節句に銭湯などに行くと、菖蒲の根や葉をいれてお湯を沸かします。
そうやって菖蒲湯を実施している銭湯が当たり前のように昔はありましたが、銭湯を利用する人口が減って、菖蒲湯を知らない人がいるかもしれません。
日本では、田植え前の重要な行事として菖蒲湯に入りました。
ただし菖蒲湯に入ることができるのは女性のみ。それも田植えをする「早乙女」と呼ばれる女性だけが入浴を許されました。
彼女たちは、家の屋根を菖蒲で清めてから菖蒲で作った鉢巻をして菖蒲湯に入浴し、禊をしたのです。この間、男性は家の外に出ていなければならないという、まさに神聖な儀式でした。
やがて菖蒲には魔除けの効果があると信じられるようになり、さらに体にも良いとされ発展し、現代まで伝えられてきました。
多くの迷信が科学的な根拠に乏しいものであるのに対し、菖蒲湯に入ると病気にかからないという言い伝えには科学的な裏づけがあります。菖蒲にはアサロンやオイゲノールという精油成分が多く含まれており、腰痛や神経痛を和らげる効果が期待できるのです。
また根っこには、血行促進や保湿の薬効がある精油成分が含まれています。
菖蒲湯に入ると体が芯から温まり、痛風や腰痛にも効果があり、菖蒲の茎を煎じて飲めば胃を丈夫にしてくれます。そして菖蒲の独特の香りにはアロマセラピー効果もあり、心身ともリラックスできます。
魔除けだった菖蒲が、人に効能をもたらす植物であることを、いつしか日本人は知ってこの言い伝えを残しました。
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