白い経維子(きょうかたびら)とは、死者に着せる経の書かれた白い着物のことで、背には南無阿弥陀仏などの経文を書いています。
経帷子は数人で分担して縫い、縫い糸は止め結びをしないという。
経帷子の縫い方から、止め結びをしない縫い方は縁起が悪いとされました。実は日本には、死と関連させて縁起を担いだ迷信が意外なほど多い。
信心深い昔の日本人は、死を連想させる言動やふるまいを極力避け、日常生活を快適に過ごそうと、あらゆる迷信を生み出して後世へと伝えてきました。
「しつけ糸をとらずに、着物を着ると死ぬ」という迷信も、そんな死と関連した迷信の一つです。
死者を連想する着物
「仕付け糸をとらずに、着物を着ると死ぬ」の「着物」は、白装束と関連しています。
今では消えつつある風習ですが、昔は人が死ぬと白装束として経雄子を必ず着せました。
しかも、本来は死者を来世へと送り出す当日に、親族の女性たち、あるいは死者の近所に住む女性たちが集まって縫うのが慣例とされていました。
●白い経維子の縫い方(作法)
①経雌子用のさらしは一反を用意します。
②さらしを定規を使わずに計り、さらしを裁断する際にもハサミを使わずに引き裂くようにします。
③複数の女性が引っ張り合うようにして縫います。
そして縫った後に糸どめをつけないのが重要なしきたりです。
この糸どめをつけないことは、現在の「しつけ縫い」と共通します。
※しつけ縫いとは、ミシンで本縫いする前に、布同士がずれないように手縫いで仮止めを行うことをいいます。
そのため、仕上げる前の段階の仕付け糸があるときに、その服に袖を通すことは経雌子を着ることを連想させ、忌み嫌われるようになったのです。
「仕付け糸を切らずに着ると仏様だ」とも言われ、さらには「仕付け糸」が「しつけ」に発展して「仕付け糸をとらずに着ると、男は人にしつけられ、女は恥をかく」とも言われるようになったそうです。