病で入院している大切な人へ、災害に合われた地域の方へ、受験の合格祈願に、勝負事の必勝祈願に・・・と、今でも千羽鶴を折って贈る風習は日本人に根強く残っています。
祈りを込めて、一心に折った千羽鶴を用意すれば、願い事は叶うと広く信じられています。
目次
なぜ千羽鶴を折ると、願いが叶うと信じられるようになったのか?
その理由の一つが、千羽鶴を折る「紙」そのものに対する信仰です。
平安時代には、紙はとても貴重なものであり、清浄で穢れを払う力が宿っていると考えられていました。
「紙(かみ)」は「神(かみ)」に通じるとも言われていました。
現代では膨大な紙が機械で量産されていますが、昔は植物から何工程も手間と時間をかけて、一枚の紙を漉いて生産しました。
その貴重な紙を使う「折り紙」は、宗教儀礼の意味合いを強く持つようになりました。
縁起の良いことがいくつも重なる千羽鶴
鶴を折ることが縁起が良いと考えられるようになったのは、室町時代になってからです。
鶴はその姿が優美で美しいことに加えて「鶴は千年、亀は万年」と言われるように長寿の象徴でした。
鶴はめでたい鳥を意味する「瑞鳥(ずいちょう)」と呼ばれてもいました。
鶴は縁起の良い鳥だから、必ず幸運が舞い降りると考えたのは、日本人の自然な心情です。
なぜ千羽折ると良いと言われたのか?
ことわざ「鶴は千年」の話にもあるように、千という数字が特別な意味を持っています。
民俗学者の岩井宏責(いわいひろみ)氏は、その著『吉を招く「言い伝え」』で、千という数字は数多いことを示し、よりめでたさを得ようとしたと分析しています。
だから千羽もの鶴を連ねることで、願い事が叶うと信じられるようになったのです。
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