古事記の最初のほうで語られる、国土・人間・万物を創造したという三柱の神をご存知でしょうか。
天御中主神(天御中主神(あめのみなかぬしのかみ))・高皇産霊神(たかみむすひのかみ)・神皇産霊神(かみむすひのかみ)という舌を噛みそうな名前の神様のことを三柱の神といいます。
この神様が今に伝わる天皇家の祖先と言われます。
平成の終わりが見え、次の時代へと日本が向かおうとする今、天皇家の三柱の神について少し学んでみましょう。
世界は三柱の神から始まった
『古事記』では、この世界の始まりをこのように記しています。
「天地初めてひらけしとき、高天の原に成れる神の名は、天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、次に高皇産霊神(たかみむすひのかみ)、次に神皇産霊神(かみむすひのかみ)。この三柱の神は、みな独り神と成りまして、身を隠したまひき」
この世界ができたとき、高天原に最初に現れた神は天御中主神だったので、この神は高天原の中心にすわる主宰神という位置づけになります。
次に、高皇産霊神(たかみむすひのかみ)と神皇産霊神(かみむすひのかみ)が現れます。だが、これらの3神はいずれも「独り神(男女が対になった神に対しての表現)」だったので、すぐに姿を隠してしまった。
これが『古事記』が描く最初の光景です。
簡単にいえば、天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)を中心とする3柱の神が現れたが、すぐに隠れてしまった。ただし、「隠れた」というのは「消え去った」ということではない。その姿を隠しただけで、影響力は厳然としてこの世界に保っています。
だから日本列島は、今でもこの3柱の神が「支配」している、と解釈できます。
天皇家の祖先神に縁の深い数字
天皇家の祖先神は、「3」という数字に深い縁があります。
伊邪那岐命(イザナギノミコト)は妻である伊耶那美(イザナミ)を追って冥界から逃げ帰ると、穢れを祓うために禊を行った。そのときにもたくさんの神が生まれてくるのだが、最後に「貴い3柱」の神が誕生します。
まず、伊邪那岐命が左目を洗うと天照大神(アマテラスオオカミ)が、右目を洗うと月夜見尊(ツクヨミ)が、そして鼻を洗うと須佐之男(スサノヲ)が生まれるのです。
喜んだ伊邪那岐命は、「私は子をたくさん産んだが、その最後に3柱の貴い子をえた」と宣言します。
そして天照大神には高天原を、月夜見尊には夜の国を、須佐之男には海原を支配せよ、と、命令するのです。
天照大神は天皇家の祖先神であり、須佐之男は八岐の大蛇退治で知られる勇猛な神です。だが、それ以上に重要なのは、このとき初めて日本列島に「昼と夜」が生まれた、ということなのです。
天照大神は日の神・・・太陽神です。そして月夜見尊は月読・・・月であり夜の神だからです。では、須佐之男の役割は何なのか?それは「荒れすさぶ」神であり、嵐、暴風雨の神なのです。
つまりここにおいて初めて、昼と夜が分かれ、さらに両者を混沌とさせる嵐が世界に生まれでたわけです。
そして伊邪那岐命・伊耶那美による日本列島創世に始まった一連の大事業は、ここでようやく終息します。天地創造と神々の創出の時代の終焉です。
三貴子(ミハシラノウズノミコ)とは?
高天原の主神にして皇室の神 天照大神(アマテラスオオミカミ)
伊勢神宮の内宮で祀られている太陽神で、皇室の祖神であり日本の氏神。
日本で最も貴い、国家の最高神と信じられてきた。
スサノオの乱暴に怒った天照大神が天の 岩戸に隠れ世界が暗黒と化す物語は、日本神話の最も中心となる位置に置かれています。高天原の神々の祭りによって天照大神が岩戸から出て来たために、世界は再び明るくなったのです。
神徳:国土平安、五穀豊穣、生命力向上
祀られる主な神社:伊勢神宮内宮(三重県伊勢市)、 各地の天祖神社、各地の神明宮・神明社
夜の国を統治する農耕と漁猟の神 月読命(ツクヨミノミコト)
神名の『月読』とは「月齢=暦を読む」ことを意味し、農耕の神や漁猟の神とされています。
あるとき月夜見尊は天照大神の命を受けてウケモチノカミ(五穀豊穣の女神)のもとに行った際、斬り殺してしまう。すると死体から、牛馬や蚕、五穀が生まれたのでそれを高天原に持ち帰った。その蛮行に天照大神は憤慨し自分と月夜見尊を離ればなれにすると、 昼と夜が生まれたといわれています。
神徳:五穀豊穣、豊漁守護、海上安全
祀られる主な神社:月山神社(山形県鶴岡市)、伊勢神宮、月読宮(三重県伊勢市)、各地の月山神社
ヤマタノオロチを退治した荒ぶる神 須佐之男命(スサノヲノミコト)
「スサ」は荒ぶ、凄まじいなどに通じる言葉で、その名の通り猛々しい神として知られます。
悪逆非道の限りをつくし、それを見かねた高天原の神々によって追放されると、たちまち 善神に変じ、ヤマタノオロチを打ち倒し出雲国を治めた。荒ぶる神としての属性が強大な 神威とされ、中世には武塔神や牛頭天王といった行疫神と習合し、後に疫病を鎮める疫神 として全国で信仰されることになった。
神徳:五穀豊穣、厄除け開運、縁結び
祀られる主な神社:八坂神社(京都府京都市)、氷川神社(椅玉県さいたま市)、須佐神社(島根県出雲市)