何世紀にもわたる健康調味料のベストセラー
お酢は4~5世紀ごろに中国から酒の醸造法とともに伝わったのがはじまりです。
一般にお酢と呼ばれているものは、糖質を含む食材を原料として、それをアルコール発酵させた後、酢酸発酵させた液体調味料を指します。主成分は酢酸です。途中まではお酒を造る工程と同じです。
お酢は料理だけでなく健康維持には欠かせないものとして、昔から親しまれています。米から醸造されたお酢だけでなく、リンゴやブドウなど果実から醸造されたお酢など種類も増えています。
お酢は血液をさらさらにし、ダイエット効果があり、便秘まで改善するなど、さまざまな効能があるとして大人気です。
驚いたことに、江戸時代にも「酢を飲むとやせる」と信じられていたという。これも、たんなる迷信とは片付けられない今では、酢は悪玉コレステロールを分解するうえ、余分にとり過ぎた糖分を分解して、脂肪として蓄えるのを防ぐことがわかっています。
体が柔らかくなるのは、お酢が乳酸を分解する効果があらわれるせい?
「酢を飲むと体が柔らかくなる」というのも、昔からよく言われます。
魚を南蛮漬けにする際に骨を柔らかくするのに酢を使います。それを見て体の硬さをほぐせるはずと考えたのではないでしょうか。
しかし体が柔らかいことと骨が柔らかいことは、別の話です。
体の柔軟性は、骨と骨をつなぐ靭帯の柔らかさによるもの。
その靭帯の主成分は、肌にも多く含まれ、最近では美容にいい成分として人気が高いコラーゲン。コラーゲンの正体は繊維状のタンパク質です。
血液が弱アルカリ性に保たれていれば問題ありませんが、疲労やストレスなどで乳酸がたまり、酸性に傾いてくると、このコラーゲンが硬くなります。
そして靭帯の柔軟性が低下すれば、体の柔軟性も低下するというわけです。
お酢には疲労などで溜まる乳酸を分解する効果があると言われています。靭帯だけでなく筋肉も同じで、乳酸がたまると筋肉は硬くなり、肩こりや腰痛を起こすとされ、お酢によりそれを改善する効果が期待できます。
靭帯と筋肉が柔らかくなるなら、「体が柔らかくなる」と伝えられているのも、まったくのウソではないと言えるかもしれません。
お酢の歴史
一番古いのは、紀元前13世紀ごろイスラエルの指導者モーセが文献に酢のことを記していて、その当時すでに酢のあったことが推定できます。
中国では孔子の時代にすでに酢があり、日本では、奈良時代に酢は苦酒(からさけ)ともよばれ、醤(ひしお)、塩、色利(いろり)(煎汁(いろり)で、鰹(かつお)などの煮汁)などとともに重要な調味料でした。
天平10年(738)駿河(するが)正税帳(正倉院文書)に「酢壱斛玖斗(いっこくきゅうと)(一石九斗)」とみえ、『万葉集』巻16には、「醤酢(ひしほす)に蒜(ひる)つき合(か)てて鯛(たい)願ふ我にな見せそ水葱(なぎ)の羹(あつもの)」という歌があるように、酢を使ってなますをつくっていたことがわかります。
米酢が作られたのは平安時代、『延喜式(えんぎしき)』(927)によれば、「米六斗九升、糵(げつ)(よねのもやし)四年一升、水一石二斗から一石の酢を作る」と記されています。
鎌倉時代には和泉(いずみ)(大阪府南部)の酢が上物とされ、江戸初期には相模(さがみ)(神奈川県)中原の成瀬氏のつくる酢が第一とされ、そのほか駿河(静岡県)の吉原善徳寺や田中の酢などが知られるようになりました。
各国の酢はその地でできる酒と関係のある原料からつくられるものが多く、日本では米酢のほか、酒粕(かす)からつくる粕酢ありますが、フランスではりんご酢がりんご酒、ぶどう酢がぶどう酒、ドイツでは麦芽酢がビールと関係が深くなっています。