忍者の忍術と掟

忍者といえば、呪文を唱えてドロンと煙のように姿を消たり、はたまた巨大なガマガエルや大蛇に変身してせるような「忍術」を使うイメージがありませんか?

ネトゲの世界では、グラブルやマビノギで様々な忍術があるようです。漫画やアニメではナルトの登場人物たちが使う忍術が面白い。

しかし、現実にはそんな魔法のような忍術は無く、きびしい肉体的な鍛錬によってについた筋力による身のこなしや、潜人や暗殺のためにエ夫された道具の使用、そして、人の心理をついて敵の目をあざむく知略によるものでした。

ある意味、その鍛錬された動きが人間業を超越したものだったので、奇怪な妖術のように見えたのかもしれません。

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忍術には、大きく分けて「陽術」と「陰術」の2種類

<陽術>

たとえば身分証明の書類を偽造して他国に人り込むなど、頭を使った策略で、姿を隠すことなく行なうという意味で、陽術と呼ばれます。

陽術には話術や書法のほか、外交や築城の技術までも含まれています。

<陰術>

たとえば足音を立てずにこっそり屋敷に忍びこむなど、体を使った策略で姿を隠して行う方法です。

忍者の掟と心得

忍者とは、奇襲や暗殺など陰謀的な裏の仕事にたずさわる存在です。しかし、常に卑劣でいることが勧められたわけではありません。

刃の下に心をおいて「忍」と書く。この字どおりに、忍者には、自分の私心を強くいましめるような、自己犠牲的で厳格な精神が求められたのです。

強い信念と、主君や仲間の信頼がなければ忍者の仕事は果たせません。そのためには、勤勉で正しい心がけをそなえた人間であらねばなりません。

忍術書『萬川集海』では、理想的な忍者の心得を以下の十ヵ条にまとめています。

1)忠、勇、謀、巧、信をかねそなえ、身体も強健を保つこと。

2)柔和であって義理がたく、欲は少なく、学を重んじ、人の恩は忘れないこと。

3)弁舌に長じ、内外の書を読み智謀深く、人にはだまされないこと。

4)天命を知り、儒教、仏教の教えをよく知り、死生の天命を悟って心得ること。

5)古来の国内外の名士の気風を敬愛し、英雄の気質をそなえること。

6)日ごろは人と論争せず、善人と呼ばれること。

7)きちんとした妻子や親族をもち、 裏切って忍術を悪用しないこと。

8)諸国を旅して、各地の人情や自然をよく知っておくこと。

9)文才があり、書にも長け、軍事の才能と志をもつこと。

10)歌舞、音曲、物まねなどの遊芸を身につけ、必要に応じて使いこなすこと。

最初の一番目にある「忠・勇・謀・巧・信」とは、さしずめ、忠義心、勇敢さ、深謀の知恵、技の巧みさ、そして信義を重んじること、といったところでしょう。

最後の10番目は少々変わっているが、旅芸人に扮しての活動や、情報収集のため人の信頼を得るうえでも、学問だけでなく芸事は重視されたようです。

忍者は主君への忠義より一族の掟が優先された

忍者と主君との関係は、情を通じ合わせることもなく、割り切ったものだったそうです。

忍者を使う武将には、遠い他に情報収集に出した忍者が裏切らないよう、その妻子を国元に置いて人質とすることも多かった。しかし、これを逆手にとって本当の妻子ではない者を人質に出した例もあるという。策略に長けた忍者ですから、その忍者に策をしかけても無駄な話です。

また、伊賀流や甲賀流では、流派のなかでもさらにグループが分かれ、ときには異なる武将に仕えることもあります。

しかし、合図の松明を示して会ったときは、情報交換する決まりがあったともいわれますが、この行為は、ある意味で主君に対する裏切りといえます。

だが、戦国期には、実力者が変わるのも早く、情勢次第で仕える相手が代わるのは珍しくありません。

忍者の流派や集団としては、もし主君が滅んでも、忍術の腕前さえ買われれば、流派や集団、一族としては生き延びられます。

そこで、主君との関係よりも、流派や集団内部での掟のほうが重視されたのではないか、と考えられます。

このようなえ方は、『萬川集海』の十ヵ条とは矛盾します。

しかし、この『萬川集海』など多くの忍術書は、戦国期の動乱が去ってから書かれたものです。

つまり、逆に考えれば、ときには主君に対する裏切りも横行していたからこそ、先の十ヵ条のような心がけが求められたともいえるのかもしれない。忍者の掟と心がけは、矛盾のなかでなお己を貫くというものだったのでしょう。

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