食事を通じて神々と深く交わり合う「直会(なおらい)」の風習

食事を通じて神々と深く交わり合う「直会(なおらい)」の風習

「神撰」「神供」といえば、神前に供えるお酒や供物のことで必ず神様に食べ物や飲み物をお供えする風習があります。神様が食事を召し上がっている間は、灯明を灯したり、篝火を焚いたりします。

昔は照明といえば、火しかありません。
火は明るさだけでなく暖かさももたらすだけでなく、ケガレを焼きはらうという意味もあるので、神様の食卓を清める意味で火を灯しました。

目次

神に供える特別料理は、特別に清らかな食材を種から育てることからはじまる

日本人の賓客をもてなす時の心遣いや、作法の原点が神様を祀ることにあります。

まず、祭りの時には最高の素材、山海の珍味を揃え、清らかに調理して、特別料理を捧げます。
特に重要なのは米で、神供用の米は「宮田」「神田」「初穂田」「祭り田」などと呼ばれる特別な田でとります。
神職など特定の家が耕作したり、その年の頭屋が交代で耕作したり、村で共同耕作したりしますが、下肥は絶対に使わず、不浄な者の立ち入りを禁じ、神聖な米を作ることに徹します。

神に供える酒も特別な田の米で醸したもの。

ご飯は清浄な水と火で炊き、炊きたてを供えます。
伊勢の神宮、春日大社といった大きな神社や古い神社では、うず高く盛りつけたり、円柱状にしたりと、一目で神撰とわかる形にします。
また、赤飯、餅、おはぎ、握り飯、乗(生米を水につけてすりつぶしたもの)などにして供えるところも多い。

私たちが赤飯を見て「めでたい」と感じるのは、それが元々神撰のための特別な調理であることをなんとなく潜在的に知っているからです。

今でも地方の旧家などには、祭り用の特別な鍋釜や膳椀を持っているところがあり、神の食事は、調理法も、器も、盛りつけ方も、常の日とは変わった形にしました。

神と飲食を共にする「直会」

今では、祭りの後に、神撰を下ろして神職や氏子が食べる酒宴を「直会(なおらい)」といっている所がほとんどですが、本来は「嘗め合い(なめあい)」が転じたもので、神と人とが一緒に食事をすることであり、祭りの中心行事でした。

同じ瓶から注いだ酒、同じ釜で一度に炊いたご飯など、神様用に作った物をお裾分けしてもらい、神に供えたすぐ後で、神の御前で食べるのです。

直会は神と人との最も大切な接触で、神様用の食物を通じて神の霊力が体内に入り、神と深く交わり合うことができるのです。

直会で振る舞われる食事の内容

直会の食事の内容は、地域や神社によって異なる場合がありますが、一般的には、以下のようなものが用意されることが多いとされています。

・白米
・味噌汁
・焼き魚
・煮物(たけのこや里芋など)
・酢の物(きゅうりやなますなど)
・漬物
・神酒

また、地域によっては、天ぷらやおでん、鶏肉料理なども用意される場合があります。直会の食事は、地元でとれた新鮮な食材を使って、素朴ながらも美味しいものが提供されることが多いです。

古い記録で残っている直会の様式

「直会」という言葉が最初に登場する古い記録は、平安時代の『和名抄』(931年)にあります。『和名抄』によれば、「直会」は、神社の祭礼後に神職や氏子らが集まって神前で酒宴を催すことを指していたとされています。
※『和名抄(和名類聚抄)』は、平安時代中期に作られた辞書

その後、『延喜式』(10世紀)には、「直会」が神職や氏子による神祭りに参加した後、神社で饗宴を催す儀式として記されています。『延喜式』には、直会に用いる酒器の数や、神職や氏子の服装、儀式の流れなどが詳細に記されています。

これらの古い文献からは、神職や氏子が神社で祭礼を行った後に、神前で飲食や祝詞を捧げる儀式が行われていたことがわかります。ただし、現代の直会とは異なる形式で行われていた可能性があります。

延喜式にある直会の儀式の流れ

①神職が祭礼用の食事を供えるための器具を用意する。
②祭礼が終わった後、神職と氏子が神社の中庭に集まる。
③神職が神前に酒器を供え、参加者に挨拶する。
④神職が祝詞を捧げ、饗宴の開始を告げる。
⑤神職が、先に神前に供えた酒器を参加者に振る舞う。
⑥神職が祝詞を捧げ、飲み物を注ぐ。
⑦参加者は、神職から配られた杯で、神前に酒を捧げる。
飲み物を振る舞うのは神職だけであるが、祭りの立役者など一部の氏子にも参加させることがある。
⑧酒宴が終わると、神職が参加者に謝意を述べる。
⑨参加者は手水舎で手を清め、解散する。

以上のような流れで、当時の直会が行われていたとされています。ただし、時代によって作法や流儀に変化があった可能性があるため、このような記述がある一方で、直会の儀式がどのように行われていたかは詳細には不明な部分が多いです。

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