現在、私たちは新暦を用いて生活していることをご存じでしょうか?
最近、旧暦カレンダーが流行しているように日本人が、明治五年(1872年)まで旧暦にもとづいて生活していたことを知る人が増えて来ました。
旧暦とは何を意味するのでしょうか?
新暦は太陽の動きを基準とする太陽暦
新暦を用いれば、四季の移りかわりが、ほぼ正確につかむことができます。
どの年の1月1日でも、太陽の高さや日照時間はほぼ等しくなります。
新暦に対して旧暦は、太陽太陰暦です。
旧暦は月の満ち欠けを基準にして暦をつくられています。
だから旧暦では、すべての月の一日が新月になります。
そして満月は、だいたい15日周期でやってきます。
旧暦カレンダーでは、日取りを決めた上で、閏月(うるうづき)によって、月の満ち欠けで決めた月と、四季の関わりを調整します。
旧暦カレンダーでみる年中行事
江戸時代以前の日本で行なわれた年中行事には、農耕にからむ祭りをもとにつくられたものが多い。
そして日本人は、古代から月の満ち欠けを基準に、自然のサイクルを知り、農耕を行なっていました。
例えば、お月見。
現在、十五夜のお月見は旧暦の9月15日を新暦に換算した日に行なっています。
だから、お月見の日が年によって異なります。
しかし旧暦を用いれば、8月15日が必ず満月になるので、8月15日を十五夜にすればよいとなります。
このほぼ一か月後に、十三夜の月見があります。
満月を迎える少し前の月をめでて、供え物をする祭りです。
それは、旧暦の9月13日の行事とされるが、新暦では十三夜の日もまちまちになります。
祭りの日取りも旧暦で決められていた
全国各地の神社のおもな祭礼の日取りも、かつては旧暦にもとづいて行われていました。
そのために近年まで、旧暦によって祭りを行なう神社も多かったのですが、新暦では祭りの日取りが年によって変わってしまいます。
このことが不便だったので、旧暦の祭りの日に近い新暦の特定の日取りに祭りを行なう神社がふえました。
山口県防府市の防府天満宮の御神幸祭は、かっては10月15日の満月の日に行なっていました。
このお祭りは、大潮の日の満潮の時間に神輿に乗った神霊を海岸にお連れして、神を海の彼方に送り出す神事です。
(一か月のなかで新月と満月の日に海の潮の満ち干がもっとも大きくなることを大潮といいます)
ところが現在ではその祭りは、新暦によって2月の第4土曜日に行なわれます。
そのために御神幸祭が、大潮の日とあわなくなりました。
このように旧暦は、かつて私たちの生活と深くかかわってきたものだと言えます。
さらに一日の吉凶も旧暦をもとに、決めるものが多い。
人間本来の五感を意識した生活を理想とする日本人なら、旧暦についての知識もそなえておく必要があります。