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死を予感させる現象と考えられたくしゃみ
ウィルス感染症対策にうるさい現代社会で、人前でくしゃみするとたいへん嫌な目で見られそうですが、以前はくしゃみをすると、周囲の人から「誰かに噂されているのかも」とからかわれることがよくありました。
これは昔から今に至るまで日本人の間で、日常的に使われている迷信のひとつです。
くしゃみは生理現象であり、鼻に何らかの刺激が与えられたことによって起こる反射運動です。
しかし、くしゃみは完全に人間がコントロールできる現象ではないこともあり、昔は一種の霊的なものだと考えられていました。
その様子は『徒然草』の作者の吉田兼好が、年老いた尼の行動で描写しています。
年老いた尼が「くさめ、くさめ」と何度もつぶやいていたので尋ねてみたところ、知り合いの子がくしゃみをして死なないようにと、おまじないを唱えていたと説明しました。
なぜ「くさめ」と唱えていたかというと、昔、くしゃみが出ているときに「休息万病」と唱えると、治るといわれており、休息万病を早口で連呼するうちに、くさめになったという。
ちなみにその「くさめ」が語源となって「くしゃみ」という言葉に変化したと言われています。
やがて、くしゃみは吉凶を占う呪術的な現象としてとらえられていきます。
くしゃみが1回なら誰かが褒めている、2回ならば憎まれている、3回連続したら誰かに惚れられている
といった具合です。
不吉なことを吹き払うために、生理現象をこのような占いの道具に利用してしまうのも、日本人の賢い生き方の一つということでしょうか。
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