ちょっと熱っぽい、喉が痛む、咳が止まらないというのは風邪の典型的な症状です。
でもたいていは一週間以内には、ほぼ治ってしまいます。
現代人にとって風邪は、怖い病気ではありません。
しかし昔の人にとっては風邪は、命取りの病気だったのです。
まさに風のごとく急にやってくる病
「風邪」の語源は「風」。
神代の人にとって風は単なる自然現象ではなく、神風という言葉が示しているように、神が往来するときに伴う現象と信じられていました。
特に、悪霊が吹かせる邪悪な風は、人間の体に障りをもたらすとして、病気に「かぜ」の語を当て、「風邪」と書いたのです。
昔は祈祷などの民間療法があたりまえでしたから、病気になると<何かが取り憑いた>と考えるのも無理からぬ事でしょう。
江戸時代の人々は、風邪に良く効く食材として3つの食材をよく利用したそうです。
それは、<ニンニク>、<ニラ>、<ショウガ>です。
この3つの食材は現在でも、風邪に効くとして人気があります。
いつの時代も風邪は万病のもとだから
現代ではすぐに治る風邪ですが、こじらせて長引かせてしまうと肺炎になったり、命を落としかねない病に発展する可能性があります。
風邪は万病のもと、気をつけたいもの。
よく手紙の結びに「お風邪を召しませんように」と書くがあります。
「人の一生に、これほどの文貰うたものがどこの世界にござりませうぞ」と男に言わせたのが、宇野千代『おはん』の主人公、おはん。
別れの手紙をこう結んだ。
『申しあげたきことは海山ござりますけれど、心せくままに筆をおきます。
薄着して、風邪などお引き下されますな。
おはんより
旦那さままゐる』
弱みにつけ込む風邪の神
風邪の神送り(かぜのかみおくり)という落語の演目があります。
江戸時代にあった「風邪の神を追いやる行事」を元につくられているので、当時の様子がよくわかります。
[あらすじ]
風邪で命を落とす人が多かった時代、悪性の風邪がはやると「風邪の神送り」をやった。
紙で風邪の神の人形を作り、鐘や太鼓で囃し立てながら隣の町や村の境まで送っていく。
終いには川や海へ流すのである。
「送れ送れ風邪の神送れ、どんどと送れ」とやっていくと、「お名残り惜しい」という奴がいた。
誰かと思ったら町内の薬屋 (または医者) であった。
さてある町内に風邪が流行し、若い衆が風邪の神送りのための寄付を集めに回るが、なかなか思うように集まらない。
やっと風の神送りを催すことができ、川へ投げ込まれた風邪の神の人形が夜になって魚獲りの網に掛かった。
大勢の人の思いが込められたものか、風の神がズーッと立ち上がった。
「なんだお前は」「わしは風邪の神だ」「それで夜網(弱み)につけ込んだな」