料理に欠かせない魚といえば、鰹と鰯。
どちらも焼き魚や刺身や煮付けだけでなく、和食に欠かせない旨みを引き出す「だし」を採る際には不可欠な食材です。
漢字に注目してみると、なぜ魚へんにこの漢字が組み合わされたのか?その由来を知ると面白い。
堅い魚と書いて鰹(かつお)
鰹はもともとは、カタイウオ、カタウオが転じてカツオの名に定まったといわれています。
現代では鰹は、鰹のたたきやお刺身になど、生のものを食べる習慣があります。しかし昔から日本人の食卓に上っていたわけではありません。
鰹を生食するようになったのは、江戸時代に入ってから。
それ以前は保存食として干すか、堅魚干にして利用しました。
そこで、干すと堅くなる魚、堅魚の合字を名としたのです。
堅魚干は、今の鰹節のことであすが、一昔前は、どこの家にも鰹節削りの箱があり、鰹節を削って味噌汁のだしをとっていました。今では、削り節は、パック入りと思っている人が多くなっているようです。
それでも、ほうれん草のおひたしに「オカカをかける」とか、おにぎりは、「オカカ入りが好き」と、鰹節を削った時代の言葉が生きています。
オカカとは、鰹節を削ることを「かく」といったので、カクが「カカ」に転じた江戸時代の婦人語です。
鰹の食べ方としては、カツオの角煮やアラ煮にしてよし。初夏の上がりカツオ、秋の下りガツオ、どちらの味も甲乙つけ難いものです。
「鰯(いわし)」は弱し?
「いわし」という名の由来は「弱し」が転じたとするのが定説になっています。
天保二年(1831)に刊行された魚河岸の見聞録『魚鑑』には「イワシはヨワシの転ずるにて、この魚至って脆弱なる故に名づく」と記されているという。
「鰯」という字は、弱魚の合字で、この魚が弱くて死にやすいことを示しています。
実際にいわしの腹を開くときには包丁は使わない。指先でスッと開く。
そのくらい身がやわらかいから鮮度が落ちるのも早いからです。
落語『猫久』に「いけないよ、もうお昼じゃあないか、お菜がいわしのぬただから、ぐずぐずしていると、いわしが腐っちまうよ」と、かみさんがいう。すると熊公「やかましいやい、いわしだいわしだってどなりやがって、近所に聞こえてはばの利いたお菜じゃねえやい」と返す。
「いわし」を下魚とする考えは古くからありました。『和訓菜』には、「紫式部、その夫左衛門佐宣孝が外出でたるに、イワシという小魚をくひければ、宣孝かへりきて、いやしきものをと笑ひければ」云々とあります。
しかし今や、いわしは健康食品として面目をほどこしているから時代の価値観は予想が付かない。