現在でも、家相を気にする人は多い。
家の設計にあたって、細かいところまで気を配ってよい家相の家をつくろうとする人もいます。
その反対に、家相にまったく無頓着な人も多い。
せっかく自分の生活の拠点となる住居なのですから、気持ちよく過ごしたいものです
家相は、陰陽五行説にたつ風水の考えにもとづいて考えられており、細かい決まりごとが多い。
しかも、家相のよし悪しに関する評価は風水師によってまちまちです。
家相を診断する方法を解説した書籍もありますが、詳しいものになると素人にはとても敷居が高い内容になってしまします。
だから、家相の細かい決まりごとに目を向けるより、家相は、より快適な住まいで生活したいと考える人びとが、経験上得た知恵の寄せ集めであることを重視したほうがいい。
悪い家相の例では、玄関が暗かったり狭かったりすると、来客が不快な思いをします。
また、夕食の準備に手間をかける台所に西日が入ると、不便です。
こういったことを一つ一つ考えていくと、もっともなことですが、私たちは家のつくりのよし悪しを、家相として教わらないかぎり、家の使い勝手に気づきにくいものです。
◎悪い家相の例
・玄関が暗い
・玄関の面積が狭い
・台所に強い西日が入る
・風呂の換気が良くない
・寝室の風通しが悪い
・ベッドを置く位置の下に火や水を使う場所がある
・部屋の南や東に押し入れがある
家相で幸運を呼ぶ家
家相の考えの、誰にもあてはまる部分は、比較的分かりやすい。しかし本格的に家相に取り組む場合には、住む人と家のつくりや家具の配置の関係が重要になってきます。
人間と方角との相性は、九星占術でわり出します。
そして、生活する者の九星がもつ性質と、相性のよい方角を重んじて、間取りや家具の配置を決めていくのです。
九星とは、一白・二黒・三碧・四緑・五黄・六白・七赤・八白・九紫の9種類の『気』の種類を意味します。
北斗七星と、それに隣接する星を総称した、という説もありますが、風水では『気』を表します。
また、九星は、五行と関連付けられ、 一白水星(いっぱくすいせい)・ 二黒土星(じこくどせい)・ 三碧木星(さんぺきもくせい)・ 四緑木星(しろくもくせい)・ 五黄土星(ごおうどせい)・ 六白金星(ろっぱくきんせい)・ 七赤金星(しちせききんせい)・ 八白土星(はっぱくどせい)・ 九紫火星(きゅうしかせい)と呼ばれます。
だから一白水星の人にとって、もっともよい家のつくりは、二黒土星の人にとっては最善のものにならない。
しかも家づくりにあたっては、台所の配置をよくすれば寝室の配置が悪くなり、寝室の配置をよくすれば台所の配置が悪くなるといったことが起こります。
そのために、本格的に家相を考えて、生活しようとする場合には、専門の風水師に相談するほかない。
家相と似た発想からつくられたのが、墓相
墓を、先祖が没後にくつろぐ家である、とする考えから生じたもの。
風水によって、墓の配置のよし悪しを考えることになります。
そしてよい墓相の墓をつくると、先祖の助けを受けて家が栄えるといわれるのです。
家相や墓相の発想は、家の繁栄を願った多くの人の知恵が、つくり上げてきた成果なのです。
災いを避ける知恵として確立した風水とは?
家相などの考えのもとになった風水は、中国で古くから発達してきた開運術です。
それは陰陽五行説という中国古代の科学思想によるものですが、運の流れをよむ占術よりももっと積極的な考えによってつくられたもの。
「自ら行動することによって幸運を引き寄せよう」風水師は、このような考えをもって自説を組み立てていきました。
そして、「よい運を得るには、まず運の流れを妨げているものを取り除くことからはじめるのがよい」と主張しました。
だから家相に関する説をみると、「こういった家は悪い」という事項が多く並べられていることに気づくはず。
そして、悪い要素を取り除けば、なにもしなくても幸運が寄ってくるという。
明るく生きるのが風水の基本
中国古代の遁甲術が風水に発展し、そして日本にとり入れられたあとに、日本古来の思想と融合して日本化していきました。
こうして、現在の日本には、多様な風水説がみられることになった。
風水の考えは、いくつか神道にも取り入れられています。
神社の立地や建物の配置は、風水をふまえて考えられています。
また大祓の行事で、茅の輪を潜る八の字の歩き方は、風水の呪術の歩き方に由来します。
これとともに、日本の風水説にも、神道の影響がつよくみられます。
日本の風水説には、清らかさを重んじる神道からくる要素が多いが、それは中国にみられません。
風水説に多様なものがあるとしても、その一つ一つが「より幸福に生きたい」と願った人びとの知恵を集成した貴重なものなのです。
風水にもとづく生き方とは
九星占術で出した、自分の生まれ星に悪い影響を与えるものや行為を避ける。
よくわからないものについては、自分の直感を信じて、自分がよくないと思ったものを避ける。
このようにして悪い縁を切っていけば、新しい縁が生じる機会が得られます。
たとえば、自分にあれこれ迷惑をかけてきた恋人や、友達と別れれば、かれらにとられていた時間を、自由に使えるようになり、必ず新しい出会いがあるはずです。
役に立たない古い品物を捨てれば、新しいよいものを買う心のゆとりが出てきます。
風水はこのように説いて、部屋の整理整頓を勧めます。
嫌な人間や品物を遠ざければ、自分を不快にするものが少なくなる。だからよいものにこだわらずとも風水に従って生きれば、誰もが明るく過ごせるよい社会ができると風水は説いています。