日本の部屋を仕切る建具といえば、襖ですね。
同じ建具で障子もあります。障子は中国伝来ですが、「ふすま」は日本独特の名称です。
元は「ふすま障子」といわれ、御所の寝所の間仕切りとして使用されました。
御所の寝所は「衾所(ふすまどころ)と呼ばれ、「臥す間」から来た言葉だと想像されます。
さて、この「襖」には鍵がありません。西洋のお城などは、執事がたくさんの鍵を持っている光景が見られますね。お城の部屋一つ一つに鍵があったのでしょう。
でも、日本の襖には鍵がほとんど見られません。
日本には鍵がなかった?いえ、そんなことはありません。日本にも南京錠のような鍵が昔からありました。西洋のように部屋ごとに鍵をかける習慣は馴染まなかったのです。
それは、一つは日本が安全だったから。外敵の侵入も少なかったですし、土着民族なので、よそ者はすぐに分かったのです。
ではプライバシーもなかったのか。そんなことはありません。
襖は誰にでもすぐに開けることができるからこそ、いきなり不躾に開けたりしない作法が生まれました。
まず、襖の前に座り自分の存在を知らせます。
咳払いや「失礼します」との一声で。
そして、引き手に近い手をかけて少々、5センチぐらい開けます。
これは、入室を知らせるためです。
その手を5センチぐらいの間に入れて、床から15センチぐらいのところまで降ろします。
その手で体半分ぐらいまで開けます。
体の中心で一旦止めるのは、中にいる人が居住まいを整える時間を与えるため。
そして、手をかえて逆手で、5センチほど残し開けます。
三手で開けるのが正式とされています。
これもTPOに応じてで、誰もいないとわかりきっている場合は、たったまま開けるのも良しとされます。
部屋に鍵をかけなくても、品物はもちろん、プライバシーも盗んだり、むやみに立ち入らない心の鍵を持っていた表れです。