漫画のサザエさんや昔のホームドラマなどでたまに見ましたが、招かれざる客が訪問してくるとき、ほうきを逆さに立てておくと、その客は早く帰ってくれるという迷信があります。
また、家を訪ねた際に玄関にほうきが立ててあると、自分はこの家に招かれていない、早く帰ったほうがよさそうだと暗黙のうちに理解したものです。
神が宿る神聖な道具だった「ほうき」
日本の家もフローリングになったり、掃除には掃除機を使うのがあたりまえになり、家にほうきを置かない家庭が多くなりました。
屋内で使うというよりも、屋外のベランダや庭で使うぐらいです。
大きく古い家なら、納戸や納屋の隅に置いているかもしれません。
しかし、日本人にとって本来「ほうき」は、神聖な道具として扱ってきたという歴史があります。
掃除道具であるほうきに、なぜ日本人は神を見出したのでしょうか?
その理由の一つは、昔のほうきは神に捧げた米がなる稲からできる藁で作られていたからです。
また、掃き出したり掃き寄せるといった機能に、生命を送りだしたり呼びこむパワーがあるとも考えられていました。
現代のほうきは、稲藁ではなく細い樹脂でつくられたものが販売されているので、想像もつかないと思いますがかつては稲を刈ったあとに出る藁も大切に活用していました。
そこに昔の日本人がものや資源を、大切に活用する気持ちが現れています。
さらに、祭礼のときに神前に供える「御刷毛(おはけ)」が、逆さに立てたほうきにそっくりだったことも、神聖化された理由だと言われます。
はっきりとNOが言えない日本人の知恵
夜遅くにやっとくつろげると思ったら、酔った旦那が会社の同僚を連れて帰宅することほど腹立たしく面倒なことはありません。
また、昼間でも1時間ぐらいと言いながら、4時間以上長居して夕食を余分に作らなくてはならなくなったり・・・。
押し売りならその場ではっきりと断れますが、旦那の知り合いとなると面と向かって「帰ってほしい」とは言えません。
そこで無言の圧力として、ほうきを逆さに立てて、自分たちでは手に負えない訪問客を、ほうきに降りた神様に早く帰してもらいたいという願いを込めたのです。
ただし、訪問客の目にあからさまに飛びこんでくるような場所に、ほうきを立てることはでいません。
縁や付き合いを大切にした日本人らしく、そっと控えめな場所に逆さにほうきを立て、心の中で早く帰ってほしいと念じていたのです。
現代ならどうでしょうか?
昔と比べれば女性でも、はっきりとものが言えるようになったかもしれませんが、なかなか難しいかもしれません。いちばんよく耳にするのは「片づけをはじめる」ことだそうです。
レストランや居酒屋でも、閉店間際になると店員が片づけをはじめたり、掃除をはじめます。
家庭でも同じでそれをされると、なんとなく居づらくなって「では、そろそろ帰ります」と言わざるを得なくなります。
でもできれば、逆さに立てたほうきを見て悟ってくれるほうが簡単なのですが。