ご飯に箸を立てると不幸が訪れる~日本の迷信~

現代の若者はこんな迷信は知らないかもしれませんが、子どものころ、茶碗に盛られたご飯に箸を突き立てて「縁起が悪い」「バチがあたる」などと両親や祖父母によく叱られたものです。
仏壇にお供えするごはんにお箸を突き立てるのを実際に見た人や、古い映画などで見た人がいるのではないでしょうか?
意味はわからないけれど、「死」に関係することなんだろうなと、幼いころはなんとなく理解していたように思います。

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あの世へと旅立つための死者のご飯

この迷信は、死者をあの世へと送り出す前に、死者の枕もとに置かれた「枕飯」を連想させるために、縁起が悪いと考えられてきました。

「枕飯」と聞いてもピンとこないと思います。

「枕飯」とは、死者が生前に愛用していた茶碗に、洗米することをせずにそのまま一杯分だけを特別に炊いて盛りつけたご飯のことを指します。

このとき、ご飯は山盛りに盛って、箸を垂直に突き立てるのが作法だとされています。

昔は白米を誰もがおなか一杯食べられる時代ではありませんでした。多くの日本人が、わずかな米に雑穀を混ぜて飯を炊いていた時代もありました。
だから死んであの世へ行くときぐらいは、白米をおなか一杯食べてから旅立てるようにと「枕飯」という習慣ができたのだと思います。

そのため、生きている人がご飯に垂直に箸を立てると、縁起が悪いと考えられたのです。

同様に、「ご飯を山のようにたくさん盛りつける」ことも、枕飯を連想させるために縁起が悪いといわれます。

いくらお腹が減っていたからといって、自分で枕飯のように山盛りに盛りつけるのはタブーなのです。
テレビやYouTubeで流されているような「大食い」コンテンツは、本来の日本人の感性を辱めるものであり、食に対する謙虚さの欠片もありません。

前述のように枕飯を用意する理由は、死者があの世へと旅立つ前に、お腹が空いては気の毒だという思いやりの心から生まれたもの。

そして、箸を突き立てたのも、途中でお腹が空いたときにすぐにご飯を食べることができるようにという配慮のもと生まれた風習です。

つまり、もともと死者を思いやる心を表現するために生まれた風習が、皮肉なことに、もう一方では死者を連想させる、縁起が悪い迷信として受け継がれたのです。

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