福の神が家の中にあふれる日だからとか、掃除だ新年の準備だと誰もが忙しく走り回ることから「師走」と呼ばれる12月も、大晦日を迎えるとおせち料理の準備やら大掃除の仕上げ、カレンダーの付け替えなど、息つくひまもないほど次から次へと家事が山積します。
なかには、「掃除くらいは後回しにして、正月を迎えてからのんびりすればいいのでは?」などと気軽に考えている人がいるかもしれない。
しかし正月に掃除をしている家庭は、ほとんどありません。掃除をしようものなら家人の誰かに怒られてしまうでしょう。
正月になってから掃除をすることを、昔からの日本の風習を虹る人は許さない
日本には古くから「元日に掃除をしてはいけない」という言い伝えがあります。
一年のうちで数ある祝日のなかでも、日本人が特に大切にしてきたのが元日です。
一年の初日である元日は、旧年の災い事が清算される、希望に満ちた一日として位置付けられてきました。
門松や祝い餅などで飾りつける風習は、この日に福の神が家庭に舞い込んでくると考えているから行われているものです。
元日はいたるところに神様が宿る、おめでたい日なのです。
そんな福の神が家の中に満ちている日に、掃除をすることは、せっかく訪れてくれた福の神を家の中から掃き出して追い出してしまうことを意味します。
だから、どんなに大晦日までの日々が忙しくても、元日に掃除をすることを禁じたのです。
江戸時代の商家などはその風習が徹底して守られており、雨戸を閉め切って福の神を外に逃がさないようにしたほどです。
すべての事始めは2日からとして、元日は家で家族が集まって一年の始まりを楽しみながら祝うことが何よりの幸せです。
お掃除以外にもある元日のタブー
さらには、「元日に風呂を沸かすと火事になる」「元日に髪の毛を洗ってはいけない」「元日に料理をしてはいけない」「元日に洗濯をしてはいけない」など、元日からせっせと動くことは凶事を招くもととして自重するのが日本の慣わしとなっています。
・洗濯をしてはいけない理由
「服(福)を洗いだしてしまうかもしれない」というごろ合わせになっています。
しかし、着る服がなくなっては大変です。どうしても三が日中に行う場合は外に見えるように干さずに家の中で干すか、乾燥器を利用しましょう。
・お風呂を焚いてはいけない(火を使ってはいけない)理由
火の神様である荒神様を怒らせてはいけないという理由からです。神様も正月くらいは休みたいということです。
煮物や酢の物など日持ちするものが多く入ったおせちも、この考えの元、習慣化された伝統だといわれています。
・包丁を使ってはいけない理由
包丁は刃物です。刃物は結婚式でも使ってはいけないのと一緒で、いい縁を切ってしまうという言葉の響きで使ってはいけません。
・灰汁を出してはいけない理由
煮込み料理を作るときなどにでる灰汁(あく)を出すのも禁じられています。これは灰汁=悪を出さないようにという意味が込められているからです。
・人とケンカをしてはいけない理由
新年の始まりからいさかいを起こしてしまうと、その年の間中人との争いが絶えなくなってしまうという言い伝えから、ケンカは禁止です。
・お賽銭以外のお金を使ってはいけない理由
三が日はお賽銭以外のお金は使わないようにすること。お正月にたくさんお金を使ってしまうと、その年の間中浪費癖が抜けないと言われています。