ビワを庭に植えると病人が絶えない-日本に伝わる迷信の意味-

夏の果物のひとつにビワがあります。味はさっぱりとした甘さがあります。

奈良時代には存在していたようです。日本で栽培されだしたのは、江戸時代から。そのころの品種は小ぶりで、今、市場に並んでいる大ぶりのビワは、江戸時代に中国から入ってきた品種です。

昔から日本人に親しまれてきたビワですが、なぜか「ビワを庭に植えると病人が絶えない」と言われています。なぜ、そんなふうに言われるようになったのでしょうか?

枇杷の木
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ビワを植えると家に湿気をもたらし病気の源になる

ビワは古くから、平安時代の著書『延喜式』や『本草和名』などに登場し、日本人に親しまれてきた果物です。

しかし、当時から柿やリンゴのように自宅の庭に植えて栽培することは、固く戒められてきました。

その理由は、ビワを庭に植えると、その家には病人が絶えないというのです。

なぜ病人が出るのか?

これには諸説流布されていて、これが正解というのがありません。

その中には、あながち迷信とは言いきれないものもあります。

その一つが、ビワの木が家に湿気をもたらすからという説です。

ビワはバラ科の常緑樹なので、冬でも木の葉が枯れ落ちることはありません。

庭木として植えると、夏は密生した葉から直射日光を遮ってくれるものの、日差しが家に入りにくい住環境をもたらしてしまう。そのため、家が湿りがちになり、その影響から病人が発生しやすくなるというのです。

また、西日本地方ではビワが自生していることから、もともとビワは温暖な気候を好むことが関係しているという説もあります。

寒冷な地方では、温度の関係もあってビワの実がたわわに実るまでには年月がかかってしまう。

だから、ビワを楽しむころには人間は老いて死んでしまうとされ、縁起が悪いと考えられたのです。

ビワの剣道の奇妙な関係とは

さらに、面白い説として、日本古来の武道である剣道が関係しているらしい。

かつて、硬いビワの木が剣道の木刀の材料として、珍重された時代がありました。

剣道といえば全身を硬い防具に身を包んで競技を行いますが、昔は稽古の際に、面などの防具を着用しなかった。

そのため、木刀が血にまみれる亡とも少なくなく、やがて血の染みがついた木刀が忌み嫌われ、材料であるビワの木を自宅で栽培すると、その家に病人が発生しやすくなると言われるようになったという。

ビワの栄養成分や効能が仇となり・・・

ビワのおもな栄養成分(可食部100g)は、βカロテン当量(810mcg)、カリウム(160mg)。

注目成分は、クロロゲン酸、アミグダリンというもので、期待される効能は、高血圧予防、動脈硬化予防、脳梗塞予防、心筋梗塞予防、がん予防、老化予防、風邪予防などがあります。

ビワはβカロテンや、βクリプトキサンチンが多く含まれているのが特徴です。

これらは体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜、消化器官などを正常に保つ働きがあります。

高血圧の予防をはじめ、がん予防やアンチエイジングにも効果があるといわれます。

また、ビワにはポリフェノールの一種である「クロロゲン酸」も含まれています。

クロロゲン酸は、がん予防やウイルス疾病予防(インフルエンザ予防)に効果があると期待されている成分です。

これだけの効能があるビワですが、古くから果実だけでなく葉(枇杷葉)も薬として利用されていました。

ビワの葉には、「タンニン」や「ビタミンB17(アミグダリン/レートリル)」が含まれ、咳止めやがん予防に効果があるといわれています。

また、タンニンは細菌の繁殖を抑制するので皮膚疾患やかぶれなどにも有効とされます。

いろいろな効能があることは昔から知られていたので、庭木にビワを植えていると見知らぬ病人が、果実や葉を求めて訪れるようになり、家人に病気が移ってしまったり、病人が多く訪れるから気味が悪いと思われたようです。

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