正式な贈り物につける「のし」の正体は「アワビ」だった!

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日本人の贈り物のマナーとして知ってほしい。
正式な贈り物には、水引とともに熨斗(のし)をつける習慣があります。
こののしは、紅白の紙に「尉斗鞄(のしあわび)」という薄く伸ばして切ったアワビを包んだもの。
そう聞いても「あれ?そんなものがついていたかな?」とイメージできません。なぜなら現在は、のしは紙に印刷されているから、本物を見たことがない人がほとんどだと思います。

本格的なのしは、贈り物の酒樽に添えられた干飽をもとにつくられたものです。
アワビは、海の深いところにいます。アワビは、海に潜らないと採れません。だから古代でも、たいへん貴重な品物だったのです。

アワビは、海のそばに住む者からの最上の贈り物として、海岸地域を治めた豪族は、天皇家に大量の干アワビを献上しています。

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高価な干しアワビを効率よく利用できる熨斗鮑(のしあわび)のアイデア

干しアワビは、天皇家の祭りの供え物として珍重されたもの。それを知った人々は、「自分の土地の神様にもアワビを供えたい」と考えるようになりました。

しかしアワビは高価なもの。そこで鎌倉時代ごろから熨斗鮑が広まりました。

熨斗鮑の作り方は、アワビを薄くはいで、火熨斗(ひのし)という昔のアイロンをあてて平たく伸ばしたもの。一枚のアワビから大きな熨斗鮑ができます。それをいくつにも切って使えば、一枚のアワビを分けてあちこちの供え物にできるというわけです。

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貴重な縁起物として扱われた熨斗鮑

地域を治める武士同士の贈答品は、相手の土地の守り神である神社の供え物でした。経済的に豊かな武士たちは、神にささげる酒樽と干アワビを贈りました。しかしあまり財力のない武士は、酒樽にわずかな熨斗鮑を添えて贈りました。
この風習がもとになって現代でも続いて、贈答品にのしが添えられるようになったのです。

熨斗を扱うときのタブー

のしが海産物であるアワビでつくられるので、海産物を贈るときにはのしをつけてはならない。海産物が重なってしまうから。

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そして贈り物の代償を求める自分勝手な気持ちをこめた品物には、神事にかかわる水引とのしをつけてはならない。

昔から伝わる贈答のことわざ

●歳暮は事始めの日から
「事始め」とは十二月八日(地域によっては十二月十三日) に当たり、すす払いなどをして、正月の準備を始めた。その日に贈答をするのが習わしで、とくに関西地方で、分家から本家へ、弟子から師匠へ鏡餅を持参するのが常となっていた。

●貧者の一灯
たとえわずかな額であっても、貧しい人が差しだす寄進は、心に火をともすような、尊いものであるということ。

●慶事には少なく、弔事には多く
慶弔の祝儀袋・不祝儀袋に金銭を包むときは、慶事の場合は金額を少なくしても、弔事の場合は金額を多めに入れよ、ということ。弔事には今後の生活などを含めて、少しでも経済的にプラスとなるようにとの配慮がうかがえる。

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