男性には刺激的な赤い腰巻きが、火事場で活躍
腰巻きといえば、着物を着ていた時代まで女性の下着として使われていた布です。
昔は、女性の腰巻には特別な力が宿ると信じられていたそうです。
なぜ腰巻きが火事と関係があるのだろう?
昔は完全に真っ裸で浴室に入る習慣はなかった
昔は今ほど消火設備も防火建材も整ってなかったので、住宅地で起きる火事が起きると町内全体まで燃え広がる恐ろしいものでした。
木造の家は空気が乾燥した冬の時期は、すぐに延焼してしまいます。
万が一火事が起きても、大きくならずに鎮火してくれないだろうか・・・それが人々の願いでした。
また、昔のひとほど信仰深く、火にも風にも神が宿ると信じていたので、火が大きくなるほど火の神が怒って暴れていると考えました。
火の神の怒りを鎮めるために、女性に腰巻を振ってもらおう・・・なぜこのような迷信が生まれたのでしょうか?
腰巻きは、下半身を覆う下着というイメージが強いが、もとは宮中に仕えていた女性が、夏などに腰から下に巻きつけた衣です。
明治時代に入ってからは、腰巻きは入浴の際に使われる下腹部を隠す一枚の布として利用されるようになりました。
昔の共同浴場は、ほとんどが混浴でした。そのため男女とも、入浴の際には入浴用の肌着にあたるものを着用しました。今のように完全に裸でお風呂に入る習慣はありません。
やがて下半身を隠す布は「湯文字」と呼ばれるようになり、腰巻きとほとんど形が同じだったために、湯文字を腰巻きともいうようになりました。
当時、一般的な女性が初潮を迎える年頃には「腰巻き祝い」と呼ばれる成人の祝い事をする習慣もありました
初めて腰巻きを巻くことが許される年齢を迎えたことを意味しており、同時に、神に仕える巫女としての資格を得たという意味でもありました。
巫女の袴が赤い理由
神をもてなすことができる装いは、神の気まぐれとも考えられた火事の発生時にもその能力を発揮するものと信じられました。
神に仕える女性の象徴である腰巻きを振ることで、神の心を鎮め、それ以上の延焼を防ごうとしたのです。
そして赤という色は、火の色であり太陽の色でもあり、同時に悪霊や不浄を防ぐ色ともされたため、より延焼を防ぐのに効果があると考えられたのです。
いまも神社の巫女が身にまとっている袴が赤い色なのも、こうした理由からである。
今は周りを見渡せば、色鮮やかな色彩が氾濫しています。昔はそうではなく、自然そのものの色がほとんどです。だから「赤い色」はとても目立ちます。
火事が起きたときに、よく目立つ赤い腰巻きを振ったり、物干しざおにかけたりして火災を知らせました。
昭和の初期までその風習が残っていたのは、それだけ住宅が延焼しやすい環境で人々が暮らしていたからです。
そのような暮らしの中で、「火事のときに赤い腰巻きを振ると延焼しない」という迷信がずっと伝えられてきたのです。