鼻が赤い人物といえばピエロを思い出します。なんだか滑稽で、人の顔色ばかり伺っているような道化者。そんなピエロのようなビジネスマンがいたら、外見からはとても出世するようには見えません。
赤鼻の男は、貧乏ゆすりと同じように、昔から、将来出世できない顔相として言い伝えられてきました。
それは外見からくる印象だけで、そう思われたのではなくて別の意味があるようです。
肌が赤くなるのは大酒飲みの証拠
赤鼻は、医学的には鼻の部分の毛細血管が拡張してしまったために、血管内を流れている血液の色が浮きあがって見える症状と言われます。
この症状は、「酒さ(しゅさ)」と呼ばれている皮膚病のひとつです。
なぜ酒さになるのかという原因は不明であり、体質的な病気で、気温の変化や熱がこもること(たとえば日光に長くあたる)、あるいは精神的なストレスにより誘発される顔(特にほほ)の一過性のびまん性紅斑が初発症状と言われています。
時間が経つと、腫脹や毛細血管の拡張を伴ってくるそうです。
今は赤鼻の男を見ることは、とても珍しく感じます。
でも、迷信として言い伝えられているからには、赤鼻の男性は昔から日本のあちこちに存在していたのでしょう。
そんな赤鼻の男が出世できないと言われるようになったのは、「赤鼻の男は大酒飲み」というイメージが強かったからです。
今も昔も大酒飲みは、酒で体調を崩してしまいがちになり、金銭的にも余裕が生まれにくいもの。そんな人が、出世できるはずもないと思われるところから生まれた迷信です。
コロナウイルスが蔓延していた時期は、その姿はほとんど見なかったのですが、それ以前は居酒屋をはしごしながら、千鳥足で歩く赤ら顔のビジネスマンがあちこちにいました。
駅などで彼らを見かけると、確かに出世は望めないだろうな~、酒で失敗するタイプだろうと想像してしまいます。
赤鼻の男はアルコール依存症
赤鼻になる「酒さ」の症状はふつう一時的なもの。アルコール分が体から抜けるとともに、鼻はふつうの肌色に戻るのが一般的です。
ところが、毎日浴びるように酒を飲んでいると、拡張しきった鼻の毛細血管が元に戻りにくくなります。そのため、常に赤鼻の状態が続くようになり、ひと目見ただけでアルコール依存症だと判断できるようになります。
昔の人は医学的な知識が乏しくても、経験的に赤鼻の男はアルコール依存症と結びつけていました。
別の説では、この迷信は中国の観相学から伝えられたというものもあります。
「酒さ」の原因となるのは酒だけではなく、便秘や香辛料の摂りすぎでも起こります。肌にほんのり赤みがさすのは健康的ですが、度が過ぎて赤く腫れたようになるのは、体からの危険信号です。すぐに病院で診療を受けたほうがいい。