「山田の中の一本足のカカシ」や畑のまん中に、背筋を棒で支えられ、稲穂やトウモロコシの背よりも高くかかげられている案山子。
稲が育ち実をつけるようになると、24時間立っているわけにはいかない農家のために、鳥避けの番をしてくれる頼もしい人形です。
案山子は、人に似せたその姿で烏や獣にニラミをきかしているようにみえるが、古書によれば、「もと獣肉を焼き炎りて串に挟み立て、その臭をかがしめておどろかす故にかがしといふといへり」(『偲言集覧』)とあります。
案山子は古くは、「かがし」「かがせ」ともいいます。
『狂言』瓜盗人には「鳥獣のつかぬやうに垣を結ひ、カガシをこしらへて置かうと存ずる」とある。
当初案山子は人の形に似せず、人間の毛髪を焼いたものを竹にはさんで立てたり、ポロ布やイワシの頭を焼いて串にはさんで畔道に立てたりしました。
それが現在のように人間らしい形に変わったのは、金田一春彦氏によれば、烏や獣を脅かすという
よりも、むしろ田の神として、田んぽの稲を守ってもらおうという気持ちからのほうが強いようだという。
外国でも田にかかしを立てる。『オズの魔法使い』の少女ドロシーの仲間はブリキの木こりと、臆病ライオン、それに「かかし」。
頭は藁をつめた小さな麻袋でペンキで目鼻と口が描いてある。
古びた帽子と上下の服、愛すべきキャラクターなのだが、「脳ミソがこれっぽっちもないんで」と、かかし。みかけ倒しの役立たずの人をさして「かかし」というが、洋の東西を問わず同じ意味であるようです。