手振り水をかけられた人は死ぬ、「死に水をとる」「末期の水」~日本の迷信~

手振り水をかけられた人は死ぬ、「死に水をとる」「末期の水」~日本の迷信~

手を洗ったときに、水に濡れた手を素早く振って水気を払うという行為を私たちはよく行います。またそうしてから、タオルやハンカチでふき取ると布が濡れるのを最小限にできます。

手を振ったときに飛び散る水のことを「手振り水」といいます。
「手張り水」と呼ぶ地域もあります。

手振り水をしたときに、近くに人がいれば当然水がかかってしまうかもしれません。ペットの動物が濡れた体を振って水気を払ったさいに、飼い主の方がびしょ濡れになってなってしまうイメージです。
でもその水をかけられたほうが死んでしまうというのは、穏やかな話ではありません。

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水に宿る神の力を借りれば死者が甦ると考えた日本人

なぜ、手振り水をかけられた方が死ぬと言われるようになったのでしょうか?

日本は水源に恵まれているので、水にも神が宿っていると考えていました。
水は災害などで破壊もしますが、多くの生き物を育み、農作物の実りをもたらし、命の源であり、身や周りを清めるものであり、暮らしに欠かせないものだから、そこに神が宿っていると考えるのも信心深い日本人の感性なら自然なことです。
その水の神の力を信じて儀式を行うことで、不可能なことも可能になることもあると思いました。

そこで「死者の魂を呼び戻す」儀式が生まれました。
よくあるのは生存する人の身体に霊を降ろす儀式ですが、ここでは死んだ直後の人の魂をその場で呼び戻す儀式のことをいいます。

これは仏教が伝わる前から、日本各地で古くから伝えられている儀式です。
ある人が死を迎えたとき、周囲の人がその死者に水を吹きかけると、魂を現世へ呼び戻せるというものです。

顔に水をかけたり、水を飲ませることで、何とか生き返ってほしいと願う遺族の切実な気持ちの現われから生まれた儀式です。

「死に水」あるいは「末期の水」ともいいますが、筆、綿、櫁の葉を水に浸し、それで死者の口をうるおし、水の神の力で生き返らせようとしました。

民間療法的な医療しか行われていなかった時代は、息をしていないことや心臓の鼓動がない仮死状態でも「死んでいる」と考えていました。
だから「水を吹きかける」というある意味刺激を与えることで、目覚めることがあったのかもしれません。

死を連想させる行為は嫌われる

上記の儀式がよく行われていたことから、「手振り水をかけられる」=「死人として扱われる」となり、「手振り水をかけられた人は死ぬ」という迷信が生まれたようです。

さらに手振り水をかけた人も死を予感させる「人に手振り水をかけると、親の死に目に会えない」という迷信が存在します。

しかし、周りを気にせずに濡れた手をバタバタと振られても迷惑な話です。マナーという意味でも注意したほうがいいでしょう。

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