迷信には二重の悲劇を招かないための予防策という意味があった
身内から死者が出たとき、悲しみにくれている時間は意外と少ないものです。
通夜、告別式の準備と慌しい時間が待ち受けているからです。
働いている人であれば「忌引き休暇」として3日から7日ぐらいもらえますが、相続手続き等を含めると時間がほとんどありません。
そんな関係もあり、通夜・告別式の案内は、身近な親族よりも、死者と少し距離がある人が選ばれることが多い。
この死亡通知をする役目を担った人に言い伝えられているのが、「死亡通知は1人で行ってはいけない」という迷信。
現代は電話やファックス、さらにはメールで伝達するケースが多くなって無縁なものと思いがちです。
しかし、昔は今日のように電話もファックスもなかったので、死亡通知は関係者の家1軒1軒を、歩いて知らせて回らなければならなかった。時には、夜道を歩かなければならないこともあります。
そんなときは、1人で回るよりも、複数の人数で知らせて回るほうが効率が良く安全で良いと戒めた迷信が生まれたのです。
この慣習は2人組が基本とされ「2人使い」「とむらい飛脚」などと呼ばれました。
1人で行くことを戒めた理由は、死者が出たばかりでもあり、1人では平常心を失っており、事故が発生する要因となりやすいということからです。
いくら気丈にふるまっても、故人との思い出にひたりながら道を歩いたら注意力が散慢になり、それにともなって事故が起こりやすいもの。
そうした災難を防ぐため、この迷信が誕生したと考えられています。
知らせを受けた家では、2人組に対し酒食を出す習慣もあります。
労をねぎらうとともに、食べ物を与えることで元気づける意味合いが込められており、使者はこのふるまいに対して、儀礼的に一箸だけ口をつけることとされていました。
現代では葬儀の規模も小さくなりました。さらにコロナウイルス流行の影響で葬儀の簡素化や葬儀を行わなずに直接火葬するという流れも増えています。
だから気持ちが落ち着いてから、ゆっくりと死亡通知を出すという流れになってきているので、この迷信の意味も薄れていっているのかもしれません。