トイレには神様がいると歌になったぐらい、昔から言い伝えがあります。
自分が自然から得た食物を、また自然へと還す排泄行為をする神聖な場所としてトイレがあります。
今のような水洗トイレでは、ピンと来ない話ですが、昔は排泄物を川へ流したり、畑の肥料に使ったりしていたので、常に私達の排泄物も自然の循環の中に組み込まれていたのです。
だからその神聖な場所であるトイレを美しく保つようにするのは、当然のことだという意識が芽生えるのもわかるような気がします。
トイレ掃除がなぜ幸せをもたらすのか
なぜ、トイレを掃除すると美しい子どもが生まれると信じられたのか。
これは、現代のような水洗トイレが存在しなかった昔、トイレが「厠(かわや)」と呼ばれていた時代に由来します。
厠とは「川屋」から転じた言葉です。文字通り、かつてのトイレは、水が流れる川へと排池物を流すしくみになっていました。
川へ流れた排池物はやがて海へと流れ出る~その海は生命の源となった場所です。
トイレから川、そして海へとつながる壮大な自然の循環を、昔の日本人は強く意識していたに違いないと考えられます。
生命の源である海へと続く聖なる空間、それが昔の人にとってトイレだったのです。
そのため、トイレには特別な神様がいると考えたのです。
その神様は「厠神」と呼ばれ、その家の守り神であると同時に、出産の神様としても信じられるようになりました。
そこから、妊娠した女性がトイレ掃除を熱心に行うと、厠神のご加護によって美しい子が生まれると信じられてきたようです。
いまもトイレに花を活けている家は少なくない。
消臭効果を狙っているのと同時に、少しでも明るい雰囲気を作るために飾っている家庭もあるでしょうが、そもそもは聖なる空間にいる神を奉ろうという気持ちから生まれた習慣だと言われています。
「便所をきれいにすると美しい子が生まれる」というこの迷信、実はとても理にかなっています。
つまり、妊娠中は運動不足になりがちですですよね。そこでトイレ掃除をして少し体を動かすことによって、適度な運動効果が得られ、それによって安産になるというわけです。
厠と雪隠の違い
トイレを示す言葉は「厠(かわや)」の他に「雪隠(せっちん)」という言葉も使われます。
この2つの言葉の違いは何でしょうか?
「厠」は、古事記にも水の流れる溝の上に厠が設けられていたことが示されいます。
川の上に掛け渡した屋(小屋)の意味から、つまり「川屋」を語源とする説が有力といわれています。
「雪隠」は、中国の言葉。
中国の霊隠寺に熱心にトイレ掃除をしていた「雪とう」という和尚がいて、その和尚の名前の「雪」とお寺の名前の「隠」を取ったのが始まりです。