家族や友人、または仕事で相部屋になった同僚などに「昨夜、寝言を言ってたよ」と言われるとなんだか恥ずかしいものです。
変なことを言ってなかっただろうか?と気にしてしまいますが、寝言も人それぞれです。
人によっては、リアルに会話しているような口調で寝言を言う人がいます。
びっくりして聞いている側も、それに応えて返事をしたほうがよいのかと迷うほどです。
しかし、昔から「寝言に返事をしてはいけない」と言われています。
それはなぜでしょうか?
日本人は寝ているときは仮死状態にあると考えていた
横で寝入ってしまっている友人や知人が寝言を言っている様子を見て、ちょっとした悪ふざけから声をかけ、会話を試みようとして周囲の人にたしなめられた経験はありませんか?
「ちょっとふざけただけ」と思っても、寝言に返事をしたら、寝ている人に良くないことが降りかかる、と信じている人もいるのです。
昔から日本には「寝言に返事をしてはいけない」という言い伝えがあります。
なかでも、寝ている者に対して「くそくらえ!」などと言うと、その人には死が訪れると言われたほどです。
その理由は、昔の日本人が睡眠中の人間は仮死状態にあると考えていたためです。
さらに、寝ている人の魂は体から抜け出ているとされていました。
抜け出た魂はどこで何をしているのか?ということに関しては、諸説あります。
寝床の付近で神様と出会っているという説があるかと思えば、頭をのせている枕へ魂が移動しているという説もあります。
どの説が正しいかは不明ですが、寝ている人の生命力は衰えているから、言葉を語りかけると、そのぶん、脳の疲弊する度合いは強くなります。
これは決して体に良い影響を与えません。
ましてや、寝ている人へ罵言雑言を投げると、ショック状態に陥り、死の危険さえあると昔の日本人は考えたのです。
もともと日本人には、夢を見ることに恐怖を覚える傾向がありました。
「夢魔」と呼ばれる夢の中に現れて人を苦しませる魔物の存在を信じ、夢の中で出会うことを恐れる人もいたぐらいです。
それゆえ、寝言を言っている状態に警戒心を抱くようになったようです。
はっきりと聞き取れる寝言と、ムニャムニャとわからない寝言
ムニャムニャと何を言っているのかわからない寝言を言っている時は、まだ浅い眠りのレム睡眠と言われている状態の時です。
レム睡眠時の寝言に返事をしてしまうと、脳がさらに覚醒してしまう可能性があります。つまり、睡眠の質に影響を与えるので寝言に話しかけるのはよくありません。
やがて脳は深い眠り、ノンレム睡眠という状態になります。
ノンレム睡眠の寝言は、はっきりと会話が聞き取れるほどしっかりしています。
脳は、呼吸など、生きるために最低限の機能を残し休息しています。脳から情報が届けば、いつでも、動ける状態にあります。
いずれにしても、寝言に話しかけてしまうと、脳が反応してしまうので睡眠によくありません。