ちょっと暑くなってきたり、寒くなってきたりすると衣替えをしなきゃと気が焦り出します。
面倒だからと言って後回しにしていると、季節外れの衣装をいつまでも着てしまうことになり、ちょっと恥ずかしいものです。
日本には季節ごとに神様が存在するという考えもあります。
春には春の神様、夏には夏の神様という具合に。
衣替えをするということは、その季節の神様を迎えるための身だしなみでもあるのです。
神様だけでなく人づき合いでは、身だしなみは不可欠です。
身だしなみは、身をたしなむこと、つまり身なりに気を配り整えることです。
「衣服がヒトを人間にした」といわれるくらいに、人間に理性や羞恥心をはじめとする社会性を育んでいったことの一つが、身だしなみです。
また、通常は衣服を「着る」といいますが、この「着る」を相手に対して丁寧に言うと「召す」です。
衣服をお召しになる、ごはんを召し上がるという表現がなされます。
衣服を着ることは神様への敬意の証である
「召す」はもともと、神様に対して使う言葉でした。
それをそのまま衣服に対しても使うのは、衣服を着ることは自然界の命をまとうことを意味しているからでもあります。
たとえば、絹なら蚕の命を拝借し、織ったり、縫ったりして衣服にしています。
また綿も植物から得た自然の恵みです。皮の衣類もそうです。
自然、すなわち神をまとうわけです。
現代では環境保全の声が大きくなり、フェイクレザーや化繊が主流となっています。
確かに環境保全も大切ですが、その反面自然から得た恵への感謝が薄くなってしまったり、人工的に作られた素材だからとぞんざいに扱ったりするような風潮になっていることは問題だと思います。
衣服を着る意味には、神様への敬意という意味もあります。
昔の人は、お日様が高いときは神様の目が光っていると考え、神への礼儀として人間臭さを消すために衣服で肌を覆いました。
ですから、昼間の装いは、首元が詰まり、袖丈や裾の長い衣服を着て、手袋をし、帽子をかぶり、全身を覆うようなつつしみ深いスタイルとなったのです。
やがてこれが、最も高い格式の礼服の形になりました。
現在でも、ヨーロッパなどの宗教的儀式の際に、法皇をはじめとする聖職者がそのように装います。
それが簡略化されたものが、私たちが普段に着るスーツやワンピースです。
自然をまとうという意味から、季節に応じて衣替えを行うようになった
日本のように春夏秋冬に恵まれている国では、それぞれの季節の移り変わりにおいて欠かすことのできない行事でした。
たとえば春なら春の気を確実に迎え、稲の生育を祈る儀式が行われ、衣替えもその一環だったのです。
衣替えでは、春には春らしい、夏には夏らしい衣服にします。
この「……らしい」というのが、気を取り入れることを意味します。
自然界と一体化し、自然のエネルギーをいただき、生命力を高めるのです。
そのため、いつまでも同じ服、すなわち同じ気を着ている人は、新しい気が巡らず生命力が落ちてしまうとされ、忌み嫌われました。
穢れた人とは、気の枯れた人という意味にもなるのです。
衣替えの習慣が薄れた現代人に警告する
冷暖房が完備されている現代では、衣替えの習慣も次第に薄れているように感じます。
衣替えをおろそかにするのはもったいないこと。なぜなら、今ご紹介したように、神様のパワーをいただく開運術という意味もあるからです。
また年に四回、自分に対して行う礼儀として行えば、心をパリッと凍らせることができます。
もちろん、衣替えとは、周りの方への礼儀でもあります。
夏に、麻のすっきりとした装いをしたり、綿であっても白っぽい色の衣服を着ると、自分ばかりか、見る人も涼しい気持ちになります。
それに対して、冬着るような厚ぼったい装いをすると見るからに暑苦しく、野暮に思えます。野暮というのは気が回らないこと。
つまり、その人の運気が止まっている状態のことです。
回らないということです。
なんとなく場面にそぐわない、周りへの配慮が足りない人と感じられるのは、このためかもしれません。
ですから、昔の人たちのように幸運を引き寄せる方法として、またみんなの気持ちを一つにする意味でも、衣替えを大切にしたいものです。
桜が咲き始め、風景が春の色に染まる頃には、真っ黒よりも淡いグリーンや薄いピンクの衣服をまとったほうが見た目にも気持ちよいでしょう。
プライベートであれば何を着てもかまわないでしょうが、働く場やパブリックなところであれば、自分の装いが周囲からどのように見られるべきかという美意識が常に必要です。
立場や目的に応じた装いをすることもマナーの一つだからです。自分を客観視できることは、大人として欠かすことのできない、人づき合いの作法なのです。
神様に誉められる衣替えのコツ
〇衣替えのとき、お洗濯で気をつけるコツ
衣替えでシーズンオフの衣類を長時間しまい込む場合、お洗濯でお風呂の残り湯を使ってしまうと、そのごくわずかなタンパク質で白い衣服も黄ばんでしまうことがあります。
衣替えの際は、残り湯を使わずに、きれいな水ですすぎの回数を通常より1回多めにするのがコツです。
〇衣替えで虫食い被害にあわないコツ
ウールやシルク、アンゴラなどは特に衣類害虫が好きな素材。
冬物をしまうときは必ずフタ付きの密閉できるケースが収納のコツ。
こうすれば防虫剤の効果が長期間持続します。
〇衣替えの収納でしわにならないコツ
縫い目や裾など、着たときに目立たない位置でたたむのがコツ。
また、ハンガーでの収納は要注意。
吊るしている間にあとが付いてしまわないよう、肩幅の合ったハンガーを選びましょう。
〇衣類にしわがついてしまったときのコツ
気をつけて収納しても、しわがついてしまったときはお風呂の蒸気を利用します。
入浴後に浴室内に20分ほど吊るしておくだけで自然としわが取れます。
〇衣替えの時期に何を着たらいいかわからないという人のためのコツ
衣替えでシーズンオフのものを収納した途端、気温が大きく変化したり雨のせいで体感温度が下がったりと、衣替えの時期は着るものに迷うところです。
そんなときは脱ぎ着しやすい小物をうまく利用するのがコツ。
出かけるときは「少し暑いな」と感じる程度の格好がベストなのです。
以上、衣替えをきちんと行えば春夏秋冬の神様の「気」を取り入れることができるでした。