到着は「ちょっと遅れて」がちょうどいいと思います。
訪問する際は「時間厳守がいちばん」と思ってはいませんか?
仕事であればそれでいいと思います。儀礼的な訪問も相手によっては、仕事の1部だと言えなくもないですが、相手の勤務先に訪問するのと相手のご自宅に訪問するのとでは理由が違ってきます。
訪問時間に遅刻してしまったら
相手は、部屋を整える、身支度を整えるなど、約束の時間を気にしながら、訪問客を迎える準備に追われることが多いので、約束の時間よりちょっと遅れるぐらいのほうが、相手は「ほっとする」ものです。
といっても、遅れていいのは5〜10分程度です。道路事情などでそれ以上遅れそうになったら、必ず連絡を入れるのが心づかいです。相手が心配している場合もあるからです。
もしも訪問時間に遅刻してしまったら、遅刻の理由や言い訳は着いてから行います。電話では、簡単なお詫びの言葉と、だいたいの到着時間を伝えます。
この時にもうすぐとか、あとちょっととか、曖昧な表現はできるだけ避けましょう。
訪問先の玄関にあるチャイムの連打はしないこと
玄関先に着いたらチャイムを鳴らすのは一度だけです。相手からすぐに応答がないからと、立て続けに鳴らすのは、失礼なばかりか、人間性まで疑われてしまいます。
チャイムや呼び鈴のないお宅の場合は玄関を軽くノックし、「ごめんください」と声をかけましょう。押し売りではないのですから何度もしつこく声をかけたり、勝手口に回り込んだりしてはいけません。
相当待っても応答がない場合は、携帯電話を使って電話をかけ、「いま、着いたところです。声をおかけしたのですが……」のように連絡してみるのもスマートな方法です。
自宅にいる時間が長い人ほど、時々訪問してくるセールスや宗教の勧誘なのに辟易している可能性があるので、そうするのもいいと思います。
訪問先の玄関でコートを脱ぐ夕イミングはどうすればいいか
秋から春先にかけて防寒のためにコートを着ていくことがあると思います。訪問先でコートを脱ぐタイミングですが、これについては、二つの説があります。
ひとつはコートは玄関の外で脱ぐのが作法だという考え方と、ひとつは玄関に入ってからという2説です。
前者は日本の伝統的な作法で、本来は外套についたホコリを相手の家中に持ち込まないようにという気配りから、また、和服のコートは脱ぎ着に多少時間がかかるので、あらかじめ脱いでおくほうか玄僕先でもたつかないということから玄関の外で脱ぐのが作法になったのでは、と考えられます。
一方、後者は欧米式で、欧米の古い住宅には玄関ホールがあり、そこで脱ぐようになっていることと、コートを脱いでいると、相手から「どうぞ」といわれる前に、すでに家にあがり込む気持ちが見え見えで失礼だ、という考え方によるものです。
最近は、だんだん欧米式マナーが主流になって、一般には、玄関内で脱いでいいと思います。ただし、帽子、マフラー、手袋などは外ではずしておきます。
長居せずにすぐ帰るつもりなら「コートのままで失礼します」と声をかける
ちょっと届けものをするだけという場合など、部屋にあがる気持ちがないときは、コートのままで失礼します」とひと言断って、用件をすますといいです。
しかし、目上の方や格式の高いお宅、あるいは年配の方を訪問する場合は、日本の伝統作法に従い、コートは玄関の外で脱ぎ、軽くたたんで腕にかけ、それから声をかけるほうがいいでしょう。
雨の日の濡れた傘やコートは、玄関で軽く水気を拭きとっておく
約束の日があいにく雨だった……。こんな場合は小さなタオルを持参し、コート、バッグ、持参の品などについた水滴を→玄関の前で軽く拭きとってから声をかけるようにします。靴の水滴も、ティッシュなどで拭きとっておくと完壁です。
傘は、玄関を入る前に水気を切り、きれいにたたんで留め、傘立てがあればそこに、ない場合は玄関の戸の外の、じゃまにならないところに置きます。
また、雨の日はヘアスタイルがまとまりにくくなるので、訪問先に声をかける前にチェックして、簡単に整え直すといいでしょう。
靴下やストッキングの予備を用意しよう
茶席に招かれた場合は、替えの足袋を用意していき、席に入る直前に、真っ白な足袋に履き替えるものです。
訪問する場合はこの心得を思い出し、履き替えるまではしなくても、靴下に汚れがないかどうか、チェックしておきましょう。女性の場合はストッキングは伝線しやすいので、予備を用意していくか、汚れや伝線に気づいたらコンビニ、駅の売店などで求め、問先に向かう前に駅のトイレなどで履き替えるようにします。
靴の汚れに注意する
玄関で靴を脱ぐと、意外と靴の汚れや傷みが目立ちます。とくに注意したいのは中敷き。靴を磨くときには、中敷きもクリーナーできれいに拭いておきます。
中敷きは靴屋さんや100円均一店でも販売しています。クリーナーで拭いてもきれいにならない場合は、中敷きを新しいものに替えておくといいでしょう。
脱いだ靴はひざまずいてきちんと揃えるほうがいい
脱いだ靴の靴先を外に向けて揃えて置くのは、常識として知られていますが、このとき、最初から後ろ向きにあがるのは見た目が悪く非常識。相手にお尻を向けることになってしまうからです。
そして、家の中に向いた姿勢のままで、あがります。このとき、靴先を揃えるようにしてあがるときれいです。それからすぐに、体を斜めに向き変えてひざをついて、靴の向きを変えると上品です。立ったまま、向きを変えてはいけません。
「どうぞ、そのままで」という言葉には、甘えてもよい
訪問先に何人かでおじゃました場合、一人一人が靴を揃えていると後の人があがれないということがあります。その時に「どうぞ、そのままで」などと声をかけられたら、「恐れいります。それでは」などといい、早く次の人があがれるよう、場所をあけたほうが気がきいています。
マナーとは、ただ守るためにあるものではなく、あくまでも、その場がスムーズに、感じよく進むように配慮することです。臨機応変にふるまうことも大事なのです。
玄関やリビングのしつらえをさりげなく誉める
訪問先の相手が、こちらの好きな花を玄関などに飾り、リビングには、こちらの好きな音楽を低めに流しておく、という心づかいに長けた人がおられます。
そんな配慮に気がつかないのは失礼です。玄関やリビングをさりげなく見渡し、気がついたことがあったら、「ミニバラは私の大好きな花なんですよ。」などとお礼を述べましょう。
だからといって、玄関やリビングをキョロキョロ見回すのは失礼です。置物など、近寄って見たい場合は、「素敵ですね。拝見してもよろしいですか」と、ひと言断ってから近づくようにします。調度品や本棚の本も、勝手に触ってはいけません。「手に取ってもよろしいですか」のひと言を忘れずに。庭やベランダに勝手に出るのも、やめましょう。