特別の場面で、用いてはならない不吉な数字があります。
これは、忌み数とよばれるものです。
言霊信仰に由来し、古代人は、同音の言葉の言霊は同じはたらきをすると考えていました。
そのために、特定の数字の音が、特別の場面に不幸をもたらすと思ったのです。
「四」は「死」に、「九」は「苦」に通じる縁起の悪い数字
縁起をかついで、四階がなく四階にあたる部分を五階とよぶホテルやマンションがあります。
また、103号室の次を105号室とするようなかたちで、4のつく部屋番号を縁起が悪いからと避ける場合もあります。
これとは反対に、好まれる数字もあります。
「八」という数字は、その形が末広がり(下がひろくなっていること)であることから、「末広がりの八」として好まれています。
また「三」の数字は、「三つ」で「満つ」に通じるとして縁起のよいものと思われています。
このほかに、「七」を吉数とする「七福神」「七大寺」などの言葉もあります。
七が縁起のよいものとされた理由には、いくつかの説があります。
ふつうは七は、「天、地、人」からなる三才の数と「東、西、南、北」の四方の四の数とを足したものだから、とてもめでたいと考えられました。
「四」の数字を嫌った武士
合戦がしばしば起きた戦国時代の武士は、「死」に通じる「四」の数字を嫌いました。
そのために、「四」を「二二」と書いた当時の古文書がいくつか残っています。
右側の「二」と左側の「二」とをたして四としたのです。
また偶数は、割り切れることから、「別れる」「切れる」に通じると考えられます。
そのために、結婚式の御祝儀には五千円、一万円、三万円といった奇数になる金額が包まれることが多い。
このような忌み数字は、相手に不快感を与えることを避ける、日本の伝統的な気づかいから生まれたものなのです。
酒を飲むなら三杯かいい。その理由とは?
宴会に遅れてきた人がいたとき、「駆けつけ「三杯」といって、三杯のお酒をイッキ飲みさせようとするというのは、よく見かけられる光景だか、これはもとはといえば、酒は三杯飲むのをめでたいとする昔の言い伝えに由来しています。
中国では、奇数を「陽」の数字で縁起かよいとしており、日本もその影響を受けて、縁起かつぎによく奇数か用いられました。
とくに「三」という数字は、だめ押しの意味や多いことをあらわす数字、ひとつの区切りや限界をあらわす数字などとして、好んで用いられた。
だから、さまざまな祝いごと、祭り、人を接待するときなど、「式三献」と呼ばれる行事か生まれた。
酒と肴を合わせて一献とし、これを三回繰り返したのか「式三献」で、まずこれを儀式として行ってから、そのあと自由に飲み食いしたのです。
この式三献はいまではすたれたが、その名残として、「駆けつけ三杯」と呼ばれる習慣が残りました。
これと逆に、縁起の悪い酒の飲みかたとされたのは、盃をふたつ重ねて酒を飲むこと。
汀戸時代初期の礼法指南役 伊勢流宗家の伊勢貞丈か、この飲み方を縁起か悪いとして戒めています。
なぜかというと、戦争で討ち取つた敵の大将の首に酒を飲ませる儀式をするときや、切腹する人に酒を飲ませるときには、盃をふたつ重ねるのか習わしとなっていたから。
では、「三」がつねに縁起かいい数字かというと、漬け物や刺身などを三切れ皿に盛るのは、今でも「縁起か悪い」とよくいわれる。
三切れは、「身切れ」に音か通じるから、縁起か悪いとされているのです。