結婚式や葬儀で使えない忌み言葉は、相手を気遣う言葉遣いだった
日本には、多くの忌み言葉があります。
結婚式や葬式のときに言ってはならない言葉や、受け手の状況によって手紙で使ってはいけない言葉などをいいます。
忌み言葉は、円滑な人間関係の維持に必要
結婚式の場で、「切れる」とか、「終わる」といった言葉を聞けば、新郎新婦は離婚による結婚の終わりを連想して不快になってしまう。
また、葬式のときに、「重ねる」「くり返す」といったことを言われると、遺族は葬式が続くのではないかと思って嫌な気持ちになってしまう。
このようなことから、特別の席で使ってはならない言葉がつくられたのです。
祝いごとや出産、新築のときにも避けるべき言葉があります。
結婚祝いなどの手紙を書くときにも、このような忌み言葉を避けねばならない。
なぜなら結婚の直後に、「離れる」といった言葉を記した手紙をもらって、嬉しがる者はいないからです。
「遠く離れたところにいる同窓生である貴女の御結婚の話を伺い、御祝い申し上げます」と書きたい場合には、「遠方からの嬉しい知らせをいただき」といった表現に代えます。
お見舞いの手紙には、「寝付く」を連想させる「根付く」という言葉を使ってはならない。この忌み言葉から、お見舞いに「寝付く」ことを連想させる鉢植えを持参するのは、非礼な行為とされるからです。
◎忌み言葉の例
<祝賀一般>
朽ちる、古い、乱れる
<出産祝い>
流れる
<新築祝い>
火、散る、燃える、倒れる
<結婚祝い>
別れる、終わる、切れる、離れる、破れる、去る、戻る、帰る、飽きる、滅びる
<葬儀>
重ねる、重ね重ね、再三、再び、くれぐれも、また、たびたび、しばしば、返す返す
言霊信仰と忌み言葉
忌み言葉は、言葉が霊力をもつとする言霊信仰からつくられたもの。
それは縁起の悪い言葉を発すると、その言葉にひかれて不運がくると思われているからです。
またかつては、特別の場所で使ってはいけないとされる忌み言葉がありました。
海上では「猿」「蛇」の言葉を用いてはならないとされて、猿は「えてこう」、蛇は「ながもの」とよばれました。
これを沖言葉といいます。
山に入ったときに使わねばならない、山言葉もあります。
山言葉では、「猿」は「山の人」や「山の若い衆」、「兎」は「みみなが」、馬は「ちかせ」、犬は「へだ」や「せだ」とよばれます。ただし山言葉は、地方によって違う言い方があるので注意。
これらは、海の神や山の神が嫌う言いまわしを、避けるものとされました。
現代では、忌み言葉の数は少なくなってきていますが、祝いごとや葬礼では相手を気づかって、忌み言葉を避けることが望ましい。
そして「北」の字には、「にげる」、「そむく」という意味もあります。
そこで武士は、北の方角や「北」の字を嫌いました。
だから戦いに用いる刀、槍、兜、胃なども、家の北側を避けて置かれたという。
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