夜に爪を切ると親の死に目に会えない

子供の頃、パチンパチンと夜に爪を切り出したら必ず母親が「夜に爪を切ったらアカン!」と怒られたものです。

今ではそんなことをいう親も少なくなったと思いますが、この「夜に爪を切ってはいけない」という風習がどのように生まれたのでしょうか?

それには昔の日本人の生活環境が、大きく影響したと言われています。

現代生活では、靴下と靴を履いて歩きます。

でも、昔の庶民生活は裸足や草履だったので、爪の形状や成長速度も違っていたかもしれません。

それでも爪は伸びていくので、どこかのタイミングで爪を切ることになります。昔の人は爪というものに対して、どのような考え方を持っていたのでしょうか?

爪切り

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死者を埋葬する際の風習と爪の関係

日本では古来より、爪を切る行為自体が、あまり縁起のよいことではなかったそうです。

昔から日本では、死者を埋葬する際に、その近親者が自分の髪や爪をともに埋めるという風習がありました。この風習をきっかけとして、爪を切ると親の死に目に会えないという言い伝えが生まれたようです。

なぜ「夜に爪を切る」とか、夜間がとくに不吉だとされたのか?

たとえば、『日本書紀』にはこんな記述があります。

「人体の一部である爪には霊魂が宿っています。だから幽気が暗躍する夜に、爪を切るという行いは慎むべし・・・」

江戸時代になると、儒教的な戒めの意味合いが強まってきます。

その理由は、爪といえども、親からの授かりものであり、それを夜間に切ると親からの授かりものを粗末に扱う行為になるとされたのです。

夜という時間帯そのものが、悪い危険なイメージのあった時代だったので、その時間帯に身体の一部に傷をつけるという行為はなおさら良くないこととして認識されていたのかもしれません。

生活環境の中で生まれた戒めとして

今のように電気がなく、照明器具も発達していなかった時代は、暗がりの中で深爪をしたり、足の指を傷つける恐れがあります。

そして江戸時代中期まで、武士やその家族は「短刀」で爪を切りました。庶民は小型の「ノミ」で切っていました。

だから「夜の、行灯や焚き火、月明かりなどの明かりしかない暗い中で小刀で爪を削っていると、思わぬ怪我をして(細菌が入り)、親より先に死んでしまうので、親の死に目には会えない」という戒めもあったのかもしれません。

こうした危険を招く行為も、親不孝の始まりになると言われるようになったのです。

江戸時代にハサミはありましたが、庶民には手の届かない高級品でした。大正時代にはニッパ型の爪切りが登場し、現代のような形の折りたたみ式の爪切りが登場したのは、昭和になってからです。

不二龍彦氏の著書『迷信・俗信大百科』より

この夜に爪を切ってはいけないという風習は、中国の怪烏、姑獲烏への恐怖が関係しているという指摘がされています。

姑獲烏とは、夜間に飛び回って人間の爪を食べる烏で、凶事を人に招く烏と言い伝えられています。そのため、夜に爪を切ることを戒める風習が生まれたとか。

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