手紙を書くときの心得 武家の文書と現代の手紙

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今は手紙というより、メールという方が馴染みやすくなりました。
でも綺麗な書体で印刷された手紙は、どことなく無機質な印象があります。
だから逆に手書きの手紙が、尊ばれている傾向になっています。
手書きの手紙には、字の上手い下手はあっても、パソコンの書体にはない魅力があります。

目次

手紙の作法は武士の嗜み

手紙は、一定の形式を踏んで書くもの。現在の手紙の書き方は、鎌倉時代以後の武家の文書の流れをうけたものです。古代には、中国風の形式的な文書でした。

しかし武士の社会ではシンプルにすることが重んじられ、最後の三行に年月日、差出人、受取人の名前を記す現在のような書状がつくられました。
特に注目したいポイントは、武家の文書に、書状を受け取る相手を敬う気持ちがこめられていること。
どんなに身分の高い武士であっても、作法として自分の名前を受取人の名前より下に書き、受取人の名前に敬称をつけました。

頭語と結語は日本独特の手紙の形式

日本の手紙は、必ず頭語(冒頭に書く言葉)と結語(結びに書く言葉)を入れます。
特別の場合を除けば、「拝啓」の頭語ではじめて、「敬具」の結語で締める形式の手紙が無難です。これは「つつしんで(拝)申し上げる(啓匡と書き出して、「つつしんで(敬)申し上げました(具)」と結ぶかたちです。

基本的には「拝啓」のあとに、時候のあいさつなどを記す。そして、「さて」という語を頭にもってきて用件にあたる主文を記します。
主文が終わったら、結びのあいさつを記して、それに結語を添える。さらに日付、署名、宛名を記して手紙を完成させる。

主文に書き落としたことを追伸として記すこともあります。できるだけ下書きをきっちり添削して、主文のなかに用件をわかりやすく記すようにするのがよいでしょう。

頭語と結語の使い分け

地位の高い相手や、仲人、恩師などに対する「謹啓(とくにつつしんで申し上げます)」にはじまり、「敬白(大そうつつしんで申し上げました)」で結ぶ形式もあります。

「拝啓」にはじまり、「敬具」で結ぶもののほかに、時候のあいさつなどのない略式の手紙の形式もあります。「前略」「冠省」を頭語に「草々」を結語にするものです。

略式の手紙は「細かいあいさつは省かせていただきますが」にはじまり、「ぞんざいな走り書きで失礼します」に終わるもの。急用などの場合はこの形式でよいが、目上の人には「前略」などではじめずに、きっちりあいさつを記した「拝啓」などを頭語にする手紙を送るのがよいでしょう。

女性の手紙は、「一筆申し上げます」の頭語と「かしこ」の結語を用いるものが多い。

「かしこ」は「恐れ多い」ことをあらわす「畏し」を略したもので、「おそれ多いことを申してしまいましたがお許しください」といった語感になる。
しかしこの手紙の形式は、男性を家長とする時代につくられたもの。現在では、仕事をする女性がふえたので、女性が仕事上の手紙を書くときには、場面に応じて「拝啓」にはじまり「敬具」に終わる形式を用いてもかまわない。現代の女性が「一筆申し上げます」といったへりくだった書式で仕事上の抗議の手紙などを書くと、相手が引いてしまう。

手紙の基本は、相手に対する敬意をこめて文書をまとめる点にあります。だから心のこもった手紙は、必ずそれを受け取った者の気持ちを動かすことになります。

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