日本人ほど名刺を撒きたがる民族は珍しい

名刺はビジネスの現場に限らず、最近ではサークル活動など場所を選ばずに、挨拶時に必要な道具の一つになっています。
デザインもじつに多様で、その人自身や所属する企業や団体の特長を表すものが多い。

ビジネスの現場では、初対面の相手に対して、最初に名刺交換が行なわれます。
この名刺は、人と人とを結びつける最初の橋といえます。

だから、相手にとってわかりやすい名刺をつくることが望ましい。自分の名前とともに、肩書などを記して自分の責任範囲や知識を、相手に理解してもらう保証書なのですから。

名刺交換

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名刺は古代中国の風習だった

実は名刺交換の習慣は、古代中国にありました。
紀元前202年に前漢朝を起こした劉邦が、役人に名刺を使わせていたのです。
ただし、紙製ではなくこの時代の名刺は、木や竹を削ったものに姓名を刻んだ「刺」とよばれるものでした。

七世紀に繁栄した中国の唐朝では、刺がひろく使われていたが、日本の貴族層は刺を用いることはありませんでした。
当時の日本貴族社会は、顔を見ればどこの誰だかわかる狭いものだったので、必要なかったのです。

そういう意味で、日本社会では刺が定着しなかったのです。
江戸時代までの武家社会の有力者の多くも、幕閣、藩といった顔見知りだけの世界で生きていました。
そのために藩の垣根を越えた交流がさかんになった幕末以後になってはじめて、日本に紙の名刺が広まっていくことになりました。

劉邦

名刺は明治の幕開けとともに、急速に普及

明治時代なかばの「鹿鳴館時代」とよばれる時期に、日本の上流階級が欧米風の華やかな社交界をつくり上げました。

そしてこの時代以降、名刺が人付き合いに欠かせない道具になったのです。

基本的に名刺は、目下の者から先に渡すことになっています。「○○です。よろしくお願いします」などと言いながら、相手が受け取りやすい位置に両手で名刺をさし出す。

このような名刺交換の作法は、明治時代の社交界でつくり上げられてきたもの。

鹿鳴館

名刺には霊力が宿る

人付き合いは、姓名を知ってもらうことからはじまります。

姓は家々が代々受け継いだものであり、名は親が子供の幸福を願って名付けたもの。

言葉に霊力が宿ると考える言霊信仰をもつ日本人は、姓名を記した名刺を相手に渡すことによって、相手が末長く付き合うべきたいせつな人物であると告げるのです。

だから軽い気持ちで不特定多数の人に、自分の名刺を撒き散らすような名刺交換は、全く意味がないということです。
現代の名刺交換においても、日本人としての心遣いを大切にしたいものです。

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コメント

  1. Mizunoya Sono より:

    フランスのテレビ番組で、日本では名刺の交換が非常に多いと言っていました。フランス人も名刺を持っている人も、全然、いないわけではありませんが、日本ほど多くなく、一般的でもありません。交換も頻繁ではありません。まして、仕事で必要でない、一般人が持つことは、殆ど無いです。その番組では、日本人に名刺を渡すときは、必ず、お辞儀をして渡さなければいけないと、全員で、渡し方の練習をしていました。さらに、日本に行く予定のある人は、片面に日本語、片面にフランス語の名刺を作り、さらに、日本で日本人に渡すときは、日本語面を、相手に逆さにならないように渡し、同時に、何度もお辞儀しなければいけないと、これまた、丁寧な説明が、ありました。その時、司会者が、そうしないと、ハラキリと、説明を付け加えていました。日本で当たり前の名刺交換も、フランスでは、ビジネスの場合以外、殆ど、見かけないのです。ですから、よく、日本人が、フランス人の名刺を渡したのに、相手はくれないという場面も多くなります。それは、持っていないからなのですが、失礼なと誤解される日本人もいるかもしれません。

    • 和じかん より:

      海外でも日本と同様に名刺交換は、ビジネスの常識だと思っていました。
      ハリウッド映画や海外ドラマでも、名刺を出すシーンをよく見かけるので、そう思っていたのですが、フランスでは違うというか、そういう習慣が無い国もあるのだと始めて知りました。
      いやはや、思い込みで考えてはいけませんね。
      ありがとうございます。